「PORTRAIT」は、今注目の企業の経営層の方に、企業の成長の秘訣や経営で大切にしていることをお聞きする連載企画です。

 

デジタルマーケティングに携わる方なら、一度は耳にしたことがあり、また検討したこともあるであろう「Web接客」。そんな「Web接客」のツールの代表格が、株式会社プレイドが提供する「KARTE(カルテ)」だ。

今回、そのプレイドの倉橋健太社長に、サービスリリースから約1年半(2016年10月現在)で、1300社以上の導入という驚異的な速度での拡大と成長を続ける秘密に迫るべく、インタビューしてきた。

 

プレイド倉橋社長

プロフィール:

倉橋 健太
同志社大学を卒業後、楽天株式会社に新卒入社。楽天市場におけるWebディレクション、マーケティング、モバイル戦略、広告戦略等、多岐にわたる領域を担当し、楽天市場事業の成長に貢献。2011年10月にプレイドを創業。
 


 

──まず最初に起業された経緯からお聞きしたいのですが、最初、新卒で楽天に入られてから起業をされていますが、当初から起業をしようとお考えだったのでしょうか?

そうですね。もともと将来自分で何かやりたいという思いがありました。面接でいくつかの企業とお話しした中で、一番勢いがあって、一番人が素敵だったというか、いきいき働いている会社が楽天だったので入社しました。ちょうど、事業の買収をたくさんしていたタイミングで、楽天証券の前身の会社や、トラベル事業を買収して、業務を拡大しているところだったので、ここに入れば自分の経験にレバレッジが効くんじゃないかと思い、楽天に入ったという経緯がありますね。

 

──学生のころからそういう志向だったんですか?

そうですね。理由としては二つあって、まず家が自営業だったんですよね。親が好きに仕事をしているのを見ていて、いいなと思っていたことがありますね。あとは、大学でサークルの立ち上げをやって、今は100人超えるサークルになっているようですが、新しい場をみんなで作って、そのコミュニティを通して、何かを体験していくのが楽しいなという思いがあって、そういう経験を通して、起業というものに興味を持ちました。

 

──EC関連の事業で起業をされていますが、元々ECに興味があったんでしょうか?それとも楽天での経験があったからEC関連で起業されたのでしょうか?

楽天があったからですね。いま我々が提供しているKARTEは、ざっくりいうと、「データをどうやって顧客体験に還元していくか」というのがサービスになっています。僕はずっと楽天市場の担当だったんですが、そこではサイト上でお客さんがどう動いているかとか、どういう購買状況にあるかということを、データとかを使いながら、顧客のロイヤリティプログラムをどういう風に組めばいいか、どういうキャンペーンで次の行動を促すか、というような、Webのディレクションやマーケティングを6年半ずっとやっていました。その時の知見とか感覚や課題感が、いまのKARTEにだいぶフィードバックされていると思います。

 

プレイド倉橋社長

 

──当初は、いきなりKARTEじゃなかったとのことですが、どういった事業でスタートされたんでしょうか?

起業した当初は、ちょうどソーシャルの波が来ていて、ソーシャルの要素を活用したいろんなサービスが出てきていた時期でした。そんな背景もあり、最初は自分がやったことがなかったCtoCのサービスをやってみたいと考えるようになり、「一回やろう!」ということで、最初は(自社サービスとして)アプリを開発して提供しました。それだけでは食べていけないのでECのコンサルティングも一つの事業としてスタートしました。当時営業のコンサルタントは結構いたんですが、マーケティングやWebのディレクションを経験しているコンサルタントはほとんどいなかったこともあり、そこで最低限の収益だけ持ちながら、あとはアプリを作っていましたね。

 

──自社で提供されていたアプリは、興味があったというCtoCのアプリですか?

そうですね。飲食系のアプリです。普段は「食べログ」とか「Retty」を見ると思うんですが、本当においしいお店とか、外せない日とかって、ネット以外の情報を信じて動くんですよね。『僕が信頼する、あいつはうまい店知ってる』というのが一番の情報源なので、その人に聞くのが一番確かだ、とずっと思っていました。それがサービス上で簡単に出来たらいいんじゃないかな、ということで、グルメのキュレーションアプリを2012年の頭に出しました。

 

──そこからどのようにKARTEにつながったんでしょうか?

最初にそれをやって、その1年目の夏に、サービスのコンセプトではなくもっと前提になる部分で『このままやるのはちょっと違うな』という思いがあり、アプリはそこで開発を完全にストップして、全てやり直すことを決めました。一度リセットした上で、もう一度自分の経験とか、自分のやる必然性とか、世の中の流れを俯瞰的に見て行こうとしていたんですが、ちょうどそのタイミングで、CTO(柴山 直樹氏)と出会ってるんですよ。彼と一緒に話し始めて、一気にKARTEにピボットした、という感じですね。

サービスとしては最初と全く別物なんですが、ただ、その当時から僕のことを知ってくれている人からすると、根底にあるものは全く変わっていなくて、僕がやりたかったのは、『インターネットを通して、人に対して最適な体験をどうやったら提供できるか』という、これまでのネットが一切実現できてなかったことをやりたい、ということだったんです。どのサイトを見ても、いまだにカタログの域を脱してないと思いますし、もっとインタラクティブで、個人にとって有益な体験というのを、インターネットを介すれば、本来できるはずなので、そういう本来あるべきネットのよさみたいなものを提示していきたいと思っています。

 

──考え方は同じコンセプトなんですね。

後から考えてみると根柢のところは変わってないですね。文脈を維持しようとしたわけではないんですが、最終的に、今に至ってみると、コアなところは繋がっているというか、『自分は大きな変化をとらえた何かがしたかったんだな』という感じがしますね。

 

プレイド倉橋社長

 

──弊社も、解析ありきで、データを活用してパーソナライズが出来るというところが面白そうだな、ということで導入したんですが、データに基づいて、という発想は、楽天の時の経験が反映されてるのでしょうか?

楽天って、めちゃめちゃ大変な思いをしながらデータを使っていて、結構な労力を割いています。その労力に見合った効果があるわけなんですが、外の方と話をしてみると、びっくりするくらいデータを使ってないんです。そこのギャップにまず驚いたんですね。なので、楽天での経験があったからこそ、そこに気づけた、というのはありますね。

ただ、あのオペレーションを、他の企業でもできるかというとなかなか難しいと感じていて、そういった取り組みにおいて、高度なことでも圧倒的に簡単に実現できるよう今のプロダクトでは設計しています。

 

プレイド倉橋社長

 

──御社自身のマーケティングについてお聞きしたいのですが、現在かなりの導入社数になっていますが、どうやって1年半でここまで大きくされたんでしょうか?かなりのハイペースだと思うのですが。

まず、時間軸の話をすると、KARTEを初期構想し始めたのは、もう3年半とか前になるんですよね。そこから、2年ぐらい、プロトタイプを作ったり、いろんな企業さんにヒアリングしたりだとか、あとは、IVSみたいなベンチャーのイベントに出たりとか、いろいろ準備をして、1年半前にリリースした、というのが大きな流れです。
リリースからはそれほど時間は経っていませんが、それなりに時間をかけてやってきています。

その中で、一つ、僕らが意識してやってきたことなのですが、既存の市場に乗り込んでいく、というつもりが最初からありませんでした。要は、自分たちで新しい市場をつくる、で、そのコンセプトも自分たちが作って行く、というところが最初の視点としてありました。

Web接客というコンセプトで資金調達時のリリースなど情報発信を進めてきましたが、「接客」という言葉を聞いて、アパレルなどのオフラインでお店を持たれている企業からお問い合わせをいただくと同時に、人材や不動産などEC以外の企業様からもうちの業界でも使えないかとご連絡をいただけました。

 

プレイド倉橋社長

 

もう1点は、少なくとも、国内でいろいろ出ているマーケティングツールの中では、一番遠い未来の理想から逆引きで作ったプロダクトだと思っています。基本的に、ほとんどのマーケティングツールは、「今この課題があるから、これを解決するためにこのツール」という風にプロダクトを開発していると思うんですが、僕らは、3次、4次、5次先くらいの遠いところから考えています。

なので、“ここ”から“ここ”にいくために、本質的に重要と考えていることをプロダクトのコアとして開発しているので、たぶん時間と共に、僕らの競合と捉えられるサービスは減っていく、または変わっていくと思っています。現に、リリースした時に競合と言われていたような企業さんも、既に競合と言われなくなったりしているケースがすごく増えてきています。それは、自分たちのイメージしていた通りだと思います。

 

──事前にコンセプトとはいえ情報を出すということで、他社にまねされるんじゃないかとか、心配したりということはありませんでしたか?

なかったですね。結局、シンプルに『この課題を解決するためにこのサービス』という考え方だと真似される可能性もあると思いますが、長い時間軸で徹底的に考えているという自信が自分たちにはあったので、表面上真似されたとしても特に気にしなかったですね。

 

プレイド倉橋社長

 

──最初のファイナンスはスムーズにいかれたんでしょうか?

ファイナンスは過去2回していますが、どちらもスムーズでしたね。2回とも、自分たちが出資して欲しかった投資家から出資していただけていますし、良い評価をしていただいているんじゃないかと思っています。

実感としては、プロダクトも、人材採用も、ファイナンスも、あとは、お客様とのコミュニケーションの中でも、やっぱり一番遠いところを見た中で、その前提でのお話しというのが、何よりも僕らが今こういう状況にあれるという要因じゃないかと思っています。なので、投資家も足元のことはから考えるというよりは、ちょっと弱気な検討をしようものなら、「なんかプレイドっぽくないよね」と逆に言われるくらいで。それに、社内のメンバーも、そういう動きは全然好きじゃないですし、お客様も、まだ課題はあるけど、めっちゃやってくれそう、という期待感を持っていただけていると感じています。

 

──ヴィジョンというか、こうなりたいというのがしっかりされてるから、社員も投資家もお客様も付いてきているんですね。

そうですね。たくさんのご期待に応えていけるよう頑張り続けます。

 

プレイド倉橋社長

 

──理想やヴィジョンをどういう風に社内で共有されるんですか?

一つは、弊社に入社いただく際に、採用プロセスの中で、絶対“大きなヴィジョン”の話からするようにしています。そこに共感できるということが、僕らにとって重要な条件の一つです。そこから一貫している必要があると思うんですよね。採用ではこう言っていたけど、実態が伴っていないというのが良くなくて、入口から出口まで全て統一されている方がいいと考えているので、ちゃんと“大きなヴィジョン”から入るようにしています。

ただ最近人が増えてきている中で、どうしてもこのくらい(注:インタビュー時4名)で話すのが一番みんなの中に落ちると思うんですが、物理的に難しくもなってきているので、やり方を考えています。例えば、お昼お弁当を会社から支給して、みんなで一緒に食べながら会社のことを考える時間を作ることで醸成させていくことをトライとしてやっていますが、まだPDCAの途中で、理想からは遠いかなと思っています。

合宿も年に1回やって、ヴィジョンをたっぷり語り合うことをやっているんですが、今は、どんどん新しい人が入ってきているので、1年に1回では済まなくなってきている感じもあります。

実際、人が増えるのは結構驚異的だと思っていて、組織的なトライって重要だと思っています。人が増えたら、組織をピラミッド型にしていけば管理したり伝達しやすくなるとは思うんですが、その形で組織が大きくなっていくと、どんどん“死んでいく”人が出るわけじゃないですか。マシン化するというか。そういう会社をつくりたくないという思いがものすごく強いので、そうならないよう組織のあり方についてはものすごくトライしています。いま社内には、ビジネス(営業、コーポレート、サポート・CX、マーケティング)部門と開発部門がありますが、人が増え組織も拡大していくとシーンがたくさん生まれてくるんですよ。それを見ながら、「もう一回ゼロリセットしてみようかな」とか思っていて(笑)。

そうやってフラット志向で試行錯誤しながら、ちょっとでもよくしていくことをどれだけやり続けられるかだと思っているので、たぶん100人とか200人になっても、硬直化しないよう、変化に対して積極的であれるようガチャガチャとやっている気がします(笑)。

 

プレイド倉橋社長

 

──フラットにすると一番上が一番大変になるんじゃないですか?

その負荷を下げるようにいろいろ考えています。

ただ、変化に付き合ってくれる仲間がいないとだめですね。事業もそうですが、人が変化できないと、サービスが変化できなくなるので、そうならないようにしたいですね。
ただ、やっていることや言っていることはずっと変わっていなくて、どうすれば最適化できるかを考えながらやっているので、社員にも納得してもらえるんじゃないかなと思います。「しゃあないなぁ」という感じで(笑)。

全てにおいて理想論で突き進む、というのが僕らの性格なので、今後もそういったスタイルでサービスを展開していきますし、組織展開もしていくと思います。ただ、みんなが理想だけを追いかけていられるように、最低限ここをクリアしていればというラインは超えるよう努力しています。

僕がそういう風に理想を追いかけるという姿勢でいた方が、みんな好き勝手出来るんじゃないかと思うんですよね。一人の力で成し遂げられるのであれば、100%管理すれば済む話なのかもしれませんが、僕らがやろうとしていることはそれだと無理なので、どうやったら自分にない能力を発揮してもらえるのか、ということを常に考えていますね。

 

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