Web上で挨拶状・年賀状・名刺・封筒・ポストカード印刷等ができる「郵便局の総合印刷サービス(以下、総合印刷サービス)」。一見クリエイティブとは無関係に思われていますが、「クリエイターの活躍の場を広げたい」という思いの下さまざまな取り組みをされています。そこで今回は総合印刷サービスを担当されている、日本郵便株式会社の中田翔大さんにお話を伺いました。
80名のクリエイターを年賀状デザインに採用した日本郵便の「総合印刷サービス」とは?
――物販ビジネス部とは、具体的にどういった業務をされているのでしょうか?
主に、郵便局で取り扱っているカタログ商品や、文房具・キャラクターグッズ・フレーム切手などの店頭販売商品の企画・販売に関連した業務を行っています。カタログ商品、店頭販売商品をWebでご購入いただけるように展開もしています。
――郵便局の商品は「店頭で申し込むカタログ」というイメージが強いのですが、総合印刷サービスがWebで集客する狙いはなんでしょうか?
カタログで申し込むとなるとどうしても郵便局の店頭にお越しいただく必要があります。スマートフォンやPCからご利用いただければ、幅広いお客様に郵便局の商品を提供できるようになると考えて、総合印刷サービスではWebサービスを展開しました。
――実際に購入されるお客様の層は変わってきましたか?
カタログからご購入いただいているお客様に比べ、Web購入者はそれより若干若い世代が多くなっている印象があります。また、リピーターも着実に増えてきており、実際に一度Webで注文いただくと非常に便利に感じていただけると思います。自身の住所は勿論、相手先の住所をcsvやエクセルデータでインポートでき3,000件まで保存できます。また、投函代行サービスも行っており、宛名印刷した郵便はがきをお客様に代わり投函させていただいています。こちらもWebならではのサービスとなり非常に人気です。
クリエイターの方が広く認知され、日本郵便の中で活躍していただければという思いで企画を作っています。
――総合印刷サービスの年賀状はさまざまなクリエイターが参加されていますが、どういった思いがあるのでしょうか?
2018年度向けの年賀状では、クリエイター紹介などの特集と企画の2点に注力しています。そこでクリエイターの方が広く認知され、日本郵便のサービスと一緒に育っていただけるといいなという思いで企画を作っています。今回は制作過程を掲載しバックグランドを知っていただくことで作品の奥行きを出し、そうすることでクリエイターの想いが見え、活動がしやすい媒体と感じていただけるようにという思いがあります。
――クリエイターはどのように集められ、どのように選ばれるのでしょう?
日本郵便のグループ会社である郵便局物販サービス、JPメディアダイレクトと連携し、さまざまなところにお声掛けし、ご相談させていただきました。直接お願いしたり、ご紹介いただいたり。選ぶポイントはいくつかありますが、今回は制作過程が面白いということを重視してクラフト作品を中心に選んでいます。もともと昨年の酉年ですごく人気があったお弁当作家さんがいたのですが、完成品が可愛いのは勿論のこと、「このお弁当をどうやってつくったのか」を知りたいのではないかと思いました。その発想をから制作過程の面白さを1つのベースとして選んでいます。
――昨年と比べ今年は多くの特集が組まれ、Webサイトも大きく変更されていましたが、どういった狙いがあったのでしょうか?
昨年は検索性の向上が課題で、検索に特化したWebサイトを構築していたのですが、今年はそれに加えてコンテンツを見やすく掲載したいという考えがありました。賑やかなサイトで、なおかつ中身も見応えのあるものにしたかったので、クリエイターページや特集・企画ページについてはシンプルだけども見応えがあるように気を使って作成しています。
――今回の取り組みで大変だったことはありますか?
クリエイターページの文章はクリエイターと一緒に私達も考えて構成しました。綺麗な言葉より、生の言葉でそのまま伝えたいという思いがありましたが、表現がすごく難しかったです。一部のページの写真や動画は自分たちで撮影したものもあります。
――特集の中で中田さんのおすすめページはありますか?
個人的な推しのひとつはAKB48のチーム8ですが(笑)、クリエイター特集と「極上の年賀状」特集は見ていただきたいですね。「極上の年賀状」は箔をつかった年賀状ですが、カタログでは伝わりにくいんです。少しでも伝わるよう動画を撮影して訴求しています。これはWebならではの良さですね。もちろん、企画的にはアマナイメージズさんの作品は非常にお世話になっています(笑)
――例年弊社のストックフォトから作品を選んでいただいていますが、弊社の素材の印象をお聞かせいただけますか?
組紐(赤と白の)のような洗練された絵柄もありながら、レトロなデザインもあって幅広くクオリティの高いイメージが揃っていますよね。この犬も躍動感があって、静止画なのに迫力があります。よりかっこいいイメージをご提案いただき、受け取った側も飾りたくなるような素材を期待しています。今後ともこれまでの概念を覆すようなイメージをご提案いただきたいと思っています。
SNSやメールがある今だからこそ、若い世代に年賀状の楽しみ方を知ってもらいたいと思っています
――若者の年賀状離れが進んでいると言われていますが、この取り組みを通じて若い世代にメッセージはありますか?
私もまだ若い世代に入ると思うのですが、この会社に入社していなければ年賀状を意識することはなかったと思います。しかし、連絡をあまり取らない人や距離の少し離れた人に年賀状を出すことで、眠っていた人間関係を掘り起こしたり、普段会っている友達でも紙として挨拶を送ることで意外性が出せたりできます。年賀状を送る方は、SNSより少し手間はかかるかもしれませんが、その分もらう側も届くと喜びが際立つのではと感じていますね。SNSと同じく人と人とをつなぐ役割をしているのが年賀状だと思うので、ツールの一つとして選択してもらえばと思っています。単純に年賀状の絵柄を選ぶこと自体も楽しいですよね。
――日本郵便の「総合印刷サービス」のPRは行っていますか?
弊社からの発信はほとんどないのですが、企画内容に合わせて参加いただいている企業様がSNS等で発信してくださっています。ありがたいことにクリエイターの皆様や企業様のSNS発信によって認知が広がっているように感じています。現在すでにご購入頂いていることを考えると、SNSの効果は出ていると思います。※取材は2017年9月27日
――今後の展望を教えていただいてもよろしいでしょうか?
Webには無限の可能性があると思っています。クリエイターの皆様はさまざまな媒体で作品を発表されていますが、その発表の場のひとつとしてこのサービスを見ていただければと思っています。今年は試験的な取り組みでしたが、サイトの訪問者などを分析して今後はさらにクリエイター枠を増やしていきたいと思っています。
また、露出する媒体を増やしていくことで年賀状を意識していただき、年賀状を通じたつながりで世の中に貢献できればと思っています。今回は実物をお見せする媒体がなかったので、リアルなイベントが実現できればと考えています。実は、クリエイターの作品を郵便局に展示できないかという話もありましたが、Web限定の絵柄ということで、お客さまに興味をもっていただいても直接窓口では買えなかったりと細かい問題もあり見送ることになりました。今後は、クリエイターの実演やトークセッションなど、リアルなイベントを通じて年賀状の良さを感じていただければと思っています。もちろんそれに加えて、WebやSNS施策も強化してよりサービスを加速させていきますので今後ともよろしくお願いいたします。
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