アマナイメージズでは、国内外の第一線で活躍するクリエイターの写真・イラスト・動画作品を多数取り扱っています。クリエイターのこだわりや製作の裏側までおうかがいする連載シリーズ「Inside StockPhoto」

Ryoさんに続き第2回目の今回は谷角靖さんにお話をお伺いしました。オーロラをはじめ、世界各地の美しい絶景を写真・動画撮影されている谷角さんに、カメラマンを志したきっかけや人生のモットー、写真家としてのこだわりなど、興味深いお話をたくさん伺うことができました。

「30歳までは自由なことをしたい」と会社を辞め、カナダへ。

Inside StockPhoto vol.2 -谷角靖氏-

ー谷角さんが撮影をはじめた経緯をお聞かせください。

元々洋服が好きだったので大学卒業後アパレル企業に就職しました。将来事業を起こした時に必要な経理の勉強ができると思い、経理部を希望しました。経理部で働くうちに会社の仕組みを理解できるようになり、メリットもたくさんあったのですが、当時会社というところは仕事を早く終わらせても自分だけ先に帰ったり、休んだりしにくく、結局時間がもったいないと思うようになってきたんです。

25歳の時、「30歳くらいまで自由なことをしてサラリーマンに戻ってもおそくない」と、思い切って仕事を辞めました。スキーが得意でしたので、冬はカナダ、夏はニュージーランドでスキーを教えながら英語力も磨いていた時期ですね。

写真に関しては記録することが目的でしたので、父から借りたニコンのカメラで見よう見まね、完全に独学です。ユーコン川をカヌーで下るために、カヌーショップで働いていましたが、現地旅行会社が就労ビザを取得してくれたので、オーロラのツアーガイドに転職しました。結果、オーロラを撮影する機会が増えましたが、このころはまだ趣味に毛が生えた程度でした。

「行きたい時に行きたい場所に行ける生活がしたい」

Inside StockPhoto vol.2 -谷角靖氏-

ープロのカメラマンに転向されたのはいつですか。

2003年、カナダ政府よりビザの更新ができないと言われ、せっかくなので日本へ帰国する前にアメリカを旅することにしました。3か月かけてアメリカの国立公園を車で回っていたところ、グランドキャニオンの雄大な景色に出会ったのです。その時「こんな場所に、行きたい時に行ける生活をしたい」と強く思うようになりました。

そんなことができる仕事とはどんな仕事なのか。この時もまだ、写真家になる!とは思っていなかったのですが、漠然と印税で食べて行ける仕事がしたい、と。今思えばこの旅行が転機でしたね。

ーはじめての写真展は思いもよらない流れで実現することになったそうですね。

はい。帰国後10,000枚以上撮りためた写真を親戚や友人に一気に見せるために写真展を開きたいと思い、場所をさがしていたのですが、Nikonサロンは会場費が無料という話を聞いたので応募しました。無事選考を通過し、2003年12月、初めての写真展を東京・新宿のNikonサロンで行うことになりました。

ー初めての写真展はいかがでしたか?

おかげさまで大好評で、写真集、雑誌、FMラジオ出演などのお話もいただきました。日本でカメラマンとして順調にスタートした、と思った矢先にカナダの旅行会社のオーナーから、就労ビザが下りたとの連絡があったんです。

今の自分があるのは彼女のおかげですので、恩返しの気持ちもあり、カナダに戻ることにしました。ただし勤務時間はどんなに長くても12時間、と決めて余暇は写真撮影に当てました。

ー谷角さんの中で、写真の撮影がライフワークそのものに変わっていったんですね

そうですね。2007年に旅行会社が売却されたのを機に、「このタイミングしかない」と月給をもらう仕事を辞め、写真家として独り立ちしました。日本の風景だけでなく世界中の風景を撮っていこう、と拠点は永住権も取得していたカナダに決めました。

ライバルは自分。常に自分自信を超える努力を怠らない

Inside StockPhoto vol.2 -谷角靖氏-

ー以来、第一線で活躍されている谷角さんですが、プロとして気をつけていることはありますか?

気をつけるということかわかりませんが、プロとして、常に最新のカメラ、ソフトの勉強をすることと、営業活動をしっかりと行うことは意識しています。

ご存知のように今はデジタルの時代です。カメラの技術だけでなく、SNSの発達によりファンとのつながり方も常に変化していますので、時代に応えるということは重要だと考えています。

ライバルは常に自分自身です。2018年精一杯写真を撮影したからこそ、2019年はさらにそれを超えるべく努力する、その情熱は失いたくないですね。

自称「消防隊」のフットワークの軽さ。

Inside StockPhoto vol.2 -谷角靖氏-

ー谷角さんの作品を並べて拝見すると、ラインアップの豊富さに驚かされます。

お店の商品を並べると、足りないものがわかりますよね。それと同じで、作品も、色や季節などを取り揃えている、というイメージ撮影して足りないものは補充していきます。同じ場所でも、季節や時間帯を変え、納得がいくように撮り直すこともあります。

ー撮影計画は先々まで決まっていらっしゃるのでしょうか?

前もって計画するものとそうでないもの、両パターンありますね。
たとえばタイのランタンフェスティバルは1年以上前から計画を練っていましたし、デスバレーの砂漠に10年に1度のタイミングで花が咲く、と聞いた時は2 、3日後には飛行機に乗っていました。チャンスは逃したくないので、自分を消防隊と呼ぶくらい、フットワークは軽いです(笑)。
トップに立つには、撮影にすべてを注ぎ込むというモチベーションを持ち続けなくてはなりません。

人生は一度、後悔はしたくない。

Inside StockPhoto vol.2 -谷角靖氏-

―カメラマンになりたいと思っている人にアドバイスはありますか?

写真家になりたい人にはたくさん出会いましたが、一流になれる人は、気持ちが乗らない、用事がある、などの言い訳をしない人だと思います。才能云々より、生活のすべてを賭けるという覚悟を持っている人でなければ、成功することはできないのではないでしょうか。写真家という仕事は人に感動を与えられるすばらしい仕事だと誇りをもっています。ですから常に全力で向き合えるよう、心だけでなく、食事、トレーニングなど体調管理にも気を使っています。向上心をもって努力することが楽しくてなりません。

最近、そのマインドはどんな職業であっても同じだと考えるようになりました。例えばサラリーマンに戻ったとしても、今の自分なら全力で会社を盛り上げようと企画し、人を育てるべく努力をすると思います。

最後に

高い目的意識をもち、その時の全てを撮影に注ぎ込んできたからこそ、手に入れることのできた「好きなときに好きな場所にいくことができる生活」。しかしその地位に安住することなく、谷角さんは今年も進化をつづけられることでしょう。東京のイルミネーション、工場夜景、白川郷、ウユニ塩湖、オーロラ、桜など、2019年も撮影予定が目白押しと伺いましたが、どんな美しい世界を私たちに見せてくださるのか、拝見するのが楽しみでなりません。

 

谷角 靖

1973年大阪生まれ。
サラリーマンを経て単身で1999年カナダに渡りスキーインストラクターの資格取得後、ユーコン川カヌー下りを夢見てカナダユーコン準州ホワイトホースへ移住。以来、写真を撮り続け、写真集の出版やトークショー・セミナー等で活躍。2006年カナダに永住権を取得。現在では、地球上の美しい場所へ北米だけでなくヨーロッパ各地やアジアなどへも撮影を開始。「オーロラの降る街」(2006年ピエブックス)等著書も多く出版。日本写真家協会(JPS)会員。ノルウェーオーロラ研究機関月間オーロラ写真コンテスト最優秀賞受賞。撮影用衣装サポート:パタゴニア、衣装/アウトドアギアサポート:モンベル