本エッセイは、ライター・チャンワタシさんによる文章と、アマナイメージズ クリエイティブディレクター・松野正也によるフォトキュレーションでお届けします。
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私はくだもの味が大好きだ。
本物のくだものも好きだが、それよりもくだもの味が好きだ。
パイン味、いちご味、メロン味、スイカ味、バナナ味・・・
飴やグミ、ジュースについたそれらの味は、人を楽しませる美味しさがある。溢れるほどあるくだもの味の商品をコンビニやスーパーで見るたびに、いつも私はどれを買おうか迷ってしまう。
あるとき、「かき氷は全て同じ味」という内容のテレビ番組を観た。いちごやレモン、ブルーハワイなどバリエーション豊かなかき氷は、実は色と香りを変えることによって味を表現しており、肝心な味自体はすべて同じ砂糖で味付けされているらしい。
少しだけショックを受けたが、なんだかとても納得できた。
「くだものの味」は「くだもの味」とは全く違う。子どもの頃から、いちごの味といちご味が全然違うということは、分かっていながらちゃんと頭の中で折り合いをつけていた。
いちご味は甘くて、やわらかで、とってもキュートな味。だが本物のいちごの味は、甘酸っぱくて、さわやかで、ほんの少しだけ土っぽい。でもまじりっ気のない素直な味がする。
レモン味も、パイン味もそうだ。私たちはいつもの偽物のくだもの味を想像して、グミやジュースを買う。
世の中にはきっとそういうものが多い。偽物から始まって、知らぬ間に本物に並ぶ商品になる。カニカマもそうだし、コーヒーフレッシュだってそう。
真似ごともキャッチーなら一流だ。それを「本物と違うじゃないか!」ととやかく言う人がいたら、生まれるものは途端につまらない。
私はあの香りいっぱいの分かりやすいくだもの味が大好きだ。まだ自分は、なににおいても真似ごとばかりだけど、いつか愛されるなにかになれたら「それでいっか」と思える。
チャンワタシ(ちゃんわたし)
1990年生まれ。Webメディアの編集者をしながら、2017年6月よりフリーライターとしても活動中。取材記事・コラム・エッセイなどを手がける。日常の気づきを綴った『note』が人気。
Twitter:@chanwatac
note:https://note.mu/hoshinc
松野 正也(まつの まさや)
株式会社アマナイメージズ取締役。2007年グラフィックデザイナーとして株式会社アマナに入社、CI/VI開発・制作に携わる。2009年からamanaimages.comのWebデザイン・サイト運営を担当。現在は、主に広告制作マーケットに向けたストック商材のクリエイティブディレクションを担当している。