本エッセイは、ライター・チャンワタシさんによる文章と、アマナイメージズ によるフォトキュレーションでお届けします。
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ここだけの話、最寄駅のロータリーにて一人で缶ビールを飲むことが大好きだ。
仕事終わりにプシュッ。
仕事始めでもプシュッ。
お酒が好きで好きでしょうがない、というわけではない。それでも、音楽を聴きながら駅前で飲むことが、自分の中の一番のリフレッシュ方法なのではないかと最近気づいた。
缶ビールを1本だけ買って、ロータリーのベンチに座る。いつもの風と、人の動きがとても心地よい。ここに居れば音楽家は曲が作れそうだし、作家は小説が書けそうだ。
「良い歳した女が駅前でお酒を飲むなんて」と思うかもしれないが、幸い最寄駅にはそんな人間が多い。人数は少ないが、いつも祭りの後の夜のような雰囲気がある。
決まって鳩にエサをあげているおばさんがいる(鳩にエサをあげるために自転車の籠を改造している)。スケボーをする人もいれば歌を歌っている人もいる。ぐでんぐでんのおじさんもいるし、たまに本物の猿もいる。本当にへんな街。
その中で一人、女が缶ビールを飲む。誰もなにもわたしのことを気にしない。なんて心地が良いんだろう。
景色の一部になれる嬉しさ。わたしがここにいる必要がないということが、逆にどんな自分でも許される気がして、ありがたい。
明日わたしがモヒカンになってここに来ても、誰も気にしないんだろう。付けヒゲをつけて来ても、金髪のカツラをかぶって来ても、ピアスをジャラジャラつけて来ても、たぶん誰もなにも気にしない。ああ、ありがたい。
そうして1本飲み終わる頃には、なぜか少し気分が回復している。それ以上の時間を過ごすこともなく、大人しく家に帰る。
先日、上司に駅前で飲んでいる話をしたら、ものすごく引かれてしまった。
チャンワタシ(ちゃんわたし)
1990年生まれ。Webメディアの編集者をしながら、2017年6月よりフリーライターとしても活動中。取材記事・コラム・エッセイなどを手がける。日常の気づきを綴った『note』が人気。
Twitter:@chanwatac
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Photo by 黒川 隆斗(くろかわ りゅうと)
株式会社アマナイメージズ所属。
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