絶景写真、インスタ映え、時代とともに表現は変わるものの、変わらず求められ続ける「最高の風景」。最高の風景とはなんなのだろう、と考えてみるが、答えはきっとひとつでは無くて当然だと思う。ただ、たとえその風景写真の目的が何であれ、その写真を目の当たりにした人の心を引き込んでしまうような写真であることは共通するものと考えている。
最高の風景写真を最高と感じるのが人であるかぎり、今求められる最高を選ぶのもまた人。A.I.が追いつけない何かが、まだ厳然とある様に思えてならない。
洗練され続ける審美眼をもった「ふたりのジョン」が率いる、AWL Imagesを紹介したい。
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文 :伊藤 章彦
(アマナイメージズ『Portfolio by amanaimages』編集チーム Editor at Large)
写真:
Moreno Geremetta/awl-images/amanaimages
Leonardo Papera/awl-images/amanaimages
Christian Heeb/awl-images/amanaimages
Jason Langley/awl-images/amanaimages
AWL Images/amanaimages
AKI
2009年設立のAWL Imagesは、イギリスに住む「ふたりのジョン」が共同で設立したフォトエージェンシー。共同設立者のひとり、Jon Arnoldは、15歳で初めてフィルムカメラを手にしてからずっと写真の世界に。彼の写真への情熱、とりわけ旅と写真への情熱は変わることなく、本格的にトラベルフォトグラファーとしてのキャリアをスタートさせてから8年間、世界中を旅しながら写真を撮り続ける。やがて自身のフォトエージェンシーを設立し、写真を撮ること、集めることの両方に関わる中、John Warburton-Leeと共にAWL Imagesを設立する。
ではJohn Warburton-Leeも最初から写真の世界の人であったのか、というと少し違ったバックグラウンドの持ち主だ。サンドハースト王立陸軍士官学校に籍を置いたことのあるJohnは、後に調査目的の陸路遠征隊を率いて、アフリカ大陸、南北アメリカ大陸を旅することとなる。その中で目の当たりにした、まだ見たことのなかった世界の様々を報告という形で記してきた彼は、自然とライフワークに出会っていた。フリーランスのトラベルライターを経て、彼もまた自身のフォトエージェンシーを設立し、2009年にはJon Arnoldと共同でAWL Imagesを設立、今日にいたる。
デジタル時代以降、フィルムと現像から解放された写真の世界では、ややともすれば供給過多の状態が続いている。シャッターを切ること自体への参入障壁が下がったためと言えるだろう。理屈で言えば、「最高の写真」の絶対数も増えているはずだが、所詮探すのは人間の目、むしろ相対的には「最高の写真」を見つけにくくなっているといっても過言ではない。その傾向が当てはまらないのがAWL Imagesである。
いつもはオンラインで画面越しに会話をするだけのふたりと直接会ってみることで、その理由が分かるかもしれないという期待を胸に、イギリスに向かったのはちょうどパンデミック少し前のことだった。
ロンドンから特急列車を乗り継ぎ北西へ280kmほど。緑が美しいWhitchurchに。さすがに土地勘もなく、出張中の日帰り限界点といったところか。
駅まで車で迎えにきてもらい、5分も走ると、通りから少し入ったところに周りと調和したゲートが見えてくる。入口には『AWL Images』の看板。
ゲートを抜け、少し速度を落とした車が進む。木々の間を抜けていく私道の風は心地よい。
両脇の木々の先に目を向けると羊たちが。羊牧場もやっているのだという。普段大気汚染の中で暮らしている自分にとっては、つかの間の休暇なのか、と錯覚してしまうほどの風を感じる、どこかしら流れの違う時間だった。
中に招き入れられると、温かな食事を用意してもてなしてくれた。左がこの家の主でもあるJohn Warburton-Lee氏、そして見切れてしまっているが右端がJon Arnold氏だ。Jonは普段はロンドンに近い自身のオフィスにいるし、また二人とも撮影に出ていることも多い。いつもオンラインで会話をする時には東京を含めて必ず3画面で話すが、ふたりのジョンも実際こうして対面となると、そう頻繁ではないらしい。
敷地内には、昔、馬具などを入れていた納屋を改装したというオフィススタジオが。中に入ると世界中の壮大な写真がそれぞれの世界観を魅せ合っている、AWL Imagesの心臓部。
実際に会って話したふたりの印象は、それまで会話してきた印象と異なるものではなかったが、ただ深みを肌で感じることができた。とにかく旅と写真への並大抵ではない強い思いが、直に伝わってくる。気持ちのいい拘りと矜持。きっとふたりのジョンが持ち合わせていたのは、旅と世界への真摯な興味、興味の対象を鋭く観察する目、そして記録する能力かもしれない。それらを持っているという人は少なくはないだろう。ただ、卓越しているがゆえに、その審美眼をすり抜けることはできないようだ。
彼らの審美眼で選ばれた写真のほんの一部を、ここで紹介したい。
雲から現れる岩山郡、トレ・チーメ・ディ・ラヴァレード。イタリア、ドロミーティ
トロムソ地方のオテルティンデン山にかかるオーロラ。ノルウェー
ここで紹介できるのは壮大なコレクションの一部。世界中の風景、都市風景、ワイルドライフからその国その土地の民族文化までそろった写真を見ていると、時が経つのを忘れてしまうほど。
AI時代を迎え、実装レベルに達した審美眼AIも増えてきている。ただ、子供に何かを教えていくように、AIにもラーニングが必須。彼らの目はこの先もずっと、AIの先を進み続けるのだろう、と強く思う。
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