artfairtokyo2017

先日大盛況のうちに終了したアートフェア東京2017。
そのオープニングパーティで行われたアートパフォーマンス「DRESS for VENUS」では、注目の最新VR技術を駆使した世界初のLIVEパフォーマンスが行われました。

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イベントの様子はこちらの記事をご覧ください。
100年ハダカだったヴィーナスにコシノジュンコさんがドレスをデザイン-アートフェア東京2017

さまざまなテクノロジーを駆使したLIVEパフォーマンスの舞台裏に迫るべく、企画・制作を手掛けたスタッフのみなさんにお話を伺いました。

 

今回取材させていただいたみなさま

越智一仁さん:クリエーティブ・ディレクター(電通)
村田晋平さん:プランナー/コピーライター(電通)
秋山貴都さん:プランナー(電通)
尾崎賢司さん:プランナー(電通ライブ)
菅野了也さん:クリエーティブ・テクノロジスト(電通)
岡村尚美さん:アート・ディレクター(電通)

 

今回の指揮をとられた越智一仁さんには、以前もポートフォリオのインタビューに出ていただき、宮崎県小林市 移住促進PRムービー "ンダモシタン小林"(2016年の国内広告賞受賞ランキング1位)やご自身のバックグラウンドについてお話いただいています。


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左から越智 一仁さん、秋山 貴都さん、尾崎 賢司さん(電通)

ドレスのデザインをライブで見せられたらスゴイんじゃないか

ー絵画から切り出したヴィーナスを3Dに起こして、そのヴィーナスにVRゴーグルをつけたコシノジュンコさんが仮想空間でドレスをデザインする、という全く新しいLIVEパフォーマンスでしたが、この構想はどのような経緯で生まれたのでしょうか?

越智さん:今回アートフェア東京よりオープニングパーティでパフォーマンスイベントをやるというお話しをいただいて、企画した案の中にVRを使用したパフォーマンス案がいくつかありました。元々「Tilt Brushでパフォーマンスをやりたいよね」みたいな話も出ていたので、いろいろとブレストしていく中でヴィーナスに服を着せる、というアイデアが出ました。

ーそれぞれの担当された部分をお聞かせ下さい。

越智さん:僕は今回の取り組みの全体を見る役割で、コンセプトメイクや企画に関わりました。

秋山さん:僕は、アートフェア東京の窓口になっていまして、プランナーもしつつ、スポンサーとの調整などもやっていました。

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尾崎さん:僕はイベントをずっとやってきていたので、今回の仕事でもイベントプランナーとして主に形にするところを担当していました。

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村田さん:コピーライターとPRのプランニングをしていまして、今回は越智さんのサポートというか助監督的な(笑)


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左から村田 晋平さん、岡村尚美さん、菅野 了也さん(電通)

越智さん:僕は全体を見るとは言いながらも、リリースを書いたり、WEBのコピーを作ったりもしていまして、そういうのを手分けしてやっていました。ボリューム的にひとりでは回らないので。

岡村さん:アートディレクターで、ビジュアルまわりの全体のアートディレクションをやっていました。ヴィーナスの…おっぱいのカタチを綺麗にしたり(笑)


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菅野さん:僕はテクノロジーパートの部分を全体的に見ていました。

ーLIVEパフォーマンスという事で、現場の調整も大変だったのではないかと思うのですが、企画も含めてここはチャレンジングだった、というような部分はありますか?

菅野さん:僕がチームに加わったときは秋山さんたちが既に進めていて、「アートイベントのパフォーマンスでドレスのデザインをライブでできたらスゴイんじゃないか」って話をもらったんですが、VRでライブパフォーマンスをやろうとした時に、VRゴーグルを装着したことがある人しか分からない、という課題があって。じゃあそれをどういう風に見せるか、どういう風に具体化するかが大事だよねっていうところが論点の中心になっていました。

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ーVRの仮想空間の共有ができない分、見せ方で工夫が必要だったんですね。

菅野さん:はい。今回のパフォーマンスで言うと、コシノさんがVRを使って目の前でドレスを描いてくれるだけでも充分面白いかもしれない。でもやっぱり、ゴーグルをかぶっていないイベント参加者全員が、もっとVRの魅力を体感できる方法を模索するべきだと考えました。そこで、描いたものをその場で立体的に具現化するため「ペッパーズ・ゴースト」を応用した手法を企画しました。これなら会場のみんなが360°立体物としてのドレスを鑑賞する事ができます。また最終的に、ドレスを絵画の中に戻すということも行いました。絵画から出てきてモデルになってもらったヴィーナスにドレスをプレゼントするということを考えたら、元いた絵画の中までドレスを持ち帰ってもらってこそ、今回のコンセプトに沿ったものになると思ったからです。

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ーそれが「100年間ハダカだったヴィーナスに、ドレスをデザインする」というコンセプトになっていったと。会場にも伺いましたが、VRでコシノさんが体験されている様子が画面に映っているので、見ている人が擬似的に体験できましたし、その後立体像に投影されたので臨場感が伝わりやすかったですね。最終的に絵画に戻った事に、驚いているオーディエンスもいました。

菅野さん:あの絵画に再現する仕組みは、知人に取り組んでいる人がいて、その技術を組み合わせていけるんじゃないかなって。VRってバーチャル空間じゃないですか。ペッパーズ・ゴーストの動き自体は、僕らは肉眼で見てるので現実空間で、最後は絵画の二次元空間に移して…と、結構あっちこっちへ行っていましたね。(笑)

 

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テクノロジーのデモではなくて、ヴィーナスに着せて絵画に戻すという文脈を作りたかった

越智さん:そういう意味では若干、複雑だったというのはありますね。3つのテクノロジーを組み合わせて、VRと、ARと、AIで画像のタッチを解析、と割とトレンドの要素がごちゃっと入っているんですけど、一言でいうと何か?という問いに答えるのは難しいタイプのものなのかなと思います。ただ、それをやった理由としては、あまりテクノロジーのデモみたいにしちゃうと、結構クオリティ感が埋没しちゃうというか、既存のコンテンツに勝てないかなと。例えば、実際に3D空間に何かを描いてそれを3Dプリンターで出力しようというような話もあったんですけど、それに類似する服を3Dで作るなんていうのは既にあったりするので。どういう風にやったら面白いかなと考える中で、絵の中に着せてそれをみんなでちゃんと鑑賞して戻す、というところまでをやったら他と違うのではという話になりました。

 

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尾崎さん:やはりコンテキストとかを考えると、投影するということより2Dから→3Dになって→また2Dに戻るっていうプロセスが大事だよねという話になって、なんとなくやりたいことが固まってきました。その矢先、社内に紹介していく中で、これ…絵の権利大丈夫?みたいな話になって。(笑)

選ばれたブグローのヴィーナスの誕生

ーそれでアマナイメージズに画像の使用についてご相談いただいたんですね。ちなみに今回ご提供した画像はブグローの「ヴィーナスの誕生」でした。

 

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尾崎さん:「ヴィーナスの誕生」というと、ボッティチェリの有名な作品を思い浮かべる方も多いと思うんですが、ヴィーナスのポージングであったり、ドレスが映える美しさという点で、コシノさんの希望もありこちらをセレクトしました。

ー実はこちらの画像はオルセー美術館の所蔵で、アマナイメージズではフランス文化庁直下の組織から提供されている公式画像を扱っています。公式だからこそ、ヴィーナスに服を着せて絵画にもどす、というパフォーマンスへの使用許諾が取得できたのかなと思います。

みなさん:その節はありがとうございました…!!!(笑)

越智さん:ちゃんと絵画の形に戻してよかったなというのはありますね。初めは会場のプロジェクタ-で投影するつもりでしたから。

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VRの今後について

ーVRについてお伺いします。いまは物珍しさからの集客に使われることが多いかと思います。これから実際の広告だったりリアルな数字に繋げていくことが問われていくと思うのですが、これからの広告におけるVRの可能性についてお聞かせください。

菅野さん:VRの課題というのはすごく多くて、例えばYouTubeの動画であれば作ったら100万人に見てもらえる機会があっても、VRは作ったところでそうはいかないですよね。そういう課題はありつつも、とはいえ新しく作った時に「体験してみたい!」っていう心惹かれる感じはやはりVRのほうが作りやすいです。体験人数とか、どうやって体験してもらおうということに向き合いつつも、心が動くというところ、やってみたいなと思わせるところは、より研ぎ澄まして作っていきたいと思っています。

 

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ー具体的にどういう業種でというのはありますか?

菅野さん:手法が新しい分、まだ全然手がつけられていない部分が多いので、どことの組み合わせもまだ面白いですね。ビジネス面では、医療がいいだとか不動産がいいだとか旅行系がいいとか色々ありますけど、制作物としてクリエイターが扱っていく分にはどこの分野でも面白いものが作れると思います。

秋山さん:テレビ媒体では、どうしても仮想空間が伝わりにくいので、まだ難しいところがありますね。

越智さん:個人しか体験できないとう課題がある半面、体験できたことで得る没入感というか効果は平面の映像よりもリアリティがあるから、体験を通して信頼度が増すということはあると思いますね。

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尾崎さん:体験人数を増やすってことで考えると、旅行業界だったり、また今回のように他のテクノロジーと組み合わせてショーとして見せて行くというのも、今後増えていくんだろうなと思います。

村田さん:VRの世界から現実世界に絵を描き出す、というのが今回のショーだったなと思ったときに、絵をリアルタイムにペッパーズゴーストに投影出来ないか、という検討をしたのですが、今回の場合はフェーズを分ける演出に落ち着いてよかったなと思っています。お客さんの見所が増えましたし。ただ今後はVR体験をリアルタイムに大勢で共有したりとか、他にももっともっと面白いことがすぐにでも出来るな、という雰囲気をひしひしと感じて、それが面白かったですね。

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岡村さん:VRって、別の世界が作ってあってそれを覗き込むみたいな感覚が強いんですけど、せっかくショーなんだからその場でリアルタイムにアクションが起こった方がおもしろいと思って、今回は作っていました。

ー当日やその後の反響はいかがでしたか?

越智さん:イベントものなので、現場のライブ感を伝えるのが難しかったり、ややマニアックなテーマだったのでものすごく広がったかというと難しいところもありましたが、20記事くらいでていましたね。海外にもちょこちょこと出ました。もっと海外にも出たかったですが。日本テレビさんでも取り上げていただいています。

村田さん:その他のメディアさんからもたくさんお話しをいただきました。

尾崎さん:イベント関連の雑誌メディアからも取材依頼が来ていますね。

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ー他社でも同じような取り組み(イベント)をしたいというような反響はありますか?

越智さん:いくつかの企業の方にこの映像をお見せしたところ、ウチでもやってみたいという反応をいただいています。
今回の感想というか、やってよかったのは、どうしてもこの手の企画は技術の話になりがちなものですけど、ものづくりってこうだよなーっていう、その汗かく感じがやっぱり面白いなと思いましたね。いろんな人に迷惑を掛けてしまったところもあるのですが。(苦笑)

岡村さん:私はいま2年目なんですが、こんな仕事ができるんだ!って楽しかったです。

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久々に再集結したチームDRESS for VENUSのみなさん。
インタビュー終了後も自主提案されている最新テクノロジーを使用した企画案など、さまざまな話題で盛り上がりました。

2020年へ向けて、よりテクノロジーを駆使したプロモーションやイベントはさらに拡大していくことを予感させる取材となりました。
電通のみなさま、ありがとうございました!

 

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