2016年9月15日~18日まで開催された、東京ゲームショウ2016。今年も、当編集部でも取材に行ってきましたので、各自、気になったテーマを取り上げていきたいと思います。
今年の期間中の来場者数は27万1224人に上り、過去最高となりました。私は最終日に行ってきましたが、予想していたとはいえ、相変わらずの人の多さに圧倒されました。各社の出展内容をみると、今年は「VR元年」ということもあり、SONYのPlayStaitionⓇVRをはじめ、VRを絡めた展示が多くみられました。一方で、スマホゲーム会社のブースが、昨年ほどの規模ではなかったように感じました。VRなどの新たな表現が出てきていることに伴い、現時点ではスマホで実現出来ることが追いついておらず、専用機の方が勢いがあった、という状況でしょうか。
そんな中、筆者が注目したのがブシロードのブース。なんといっても「ラブライブ!」が絶好調ということもあり、ブース展示も「ラブライブ!」が中心かと思われましたが、メインは別のコンテンツでした。そのコンテンツとは、『次世代ガールズバンドプロジェクト「BanG Dream!」(以下、「バンドリ!」)』です。ブシロードの木谷社長も、以前のインタビューで「ラブライブ!」に次ぐ第二のヒットコンテンツとして期待していると語っていた「バンドリ!」。このコンテンツのメディアミックス展開の手法をみながら、コンテンツビジネスの“仕掛け方”と“成功の秘訣”を分析してみたいと思います。
メディアミックスとは?
「バンドリ!」とは、Wikiによると、
BanG Dream!(バンドリ)は、月刊ブシロードで連載されている同名の漫画作品及びイラスト連載をもとにしたメディアミックスプロジェクトである[1]。
と説明されています。これだけだと、ちょっとよく分からないという方も多いと思いますので、「メディアミックスプロジェクト」と呼ばれるものを少し解説しますと、あるキャラクター及びその背景のストーリーを元に、マンガやイラスト、またアニメなどのビジュアル作品を通して世界観を表現し、同じ世界観でゲームを展開、ゲームがリズムゲームであればその楽曲をCDや配信で展開。さらには、アニメやゲームで声を務めた声優が登場するリアルイベントやライブを開催する、という形で、一つのキャラクターやストーリーをベースに、さまざまなメディアを使って、多方面でコンテンツを展開していくプロジェクトです。
これにより、例えばゲームから入ったファンが、ライブに行ってリアルに楽曲を楽しんだり、アニメから入ったファンが、ゲームを通して毎日その世界観に浸ることが出来たり、という形で、さまざまなメディアを通して、ファンの方に、長く一つのコンテンツを楽しんでいただけるという仕組みとなっています。ファンとしても、例えばアニメが好きな方であれば、これまではアニメが終われば、DVDやBDをみて楽しむくらいしか出来なかったものが、ゲームで新しいイラストがたくさん出てきたり、サイドストーリーが展開されたりすることで、何年にもわたって楽しむことが出来るようになるというメリットがあります。
これで、最も成功した例の一つが「ラブライブ!」プロジェクトでしょう。2015年の紅白歌合戦にも、「ラブライブ!」のキャラクターの声を担当する声優が、アイドルグループとして出場を果たすなど、一般の方への認知度も考慮すると、最も成功した事例と言えるかもしれません。
この「メディアミックスプロジェクト」は、最近のコンテンツビジネスにおいては主流となっている形式ですが、その先駆け的なコンテンツの一つが、同じくブシロードが手掛けている「ミルキィホームズ」プロジェクトではないかと思います。コンテンツの詳しい説明は、ここではしませんが、この「ミルキィホームズ」での経験とリソースが、今回の「バンドリ!」に遺憾なく発揮されていると言えるでしょう。
「バンドリ!」のこれまで
「バンドリ!」は、2015年1月から雑誌での漫画連載が開始。同年2月に、主人公の声を担当する声優の愛美さんを中心とするバンドを結成し、作品の世界観に基づいた活動をすることが発表され、メディアミックスプロジェクトがスタートしました。
その後は、メンバーも増やしていきながら、前述の「ミルキィホームズ」のライブ等に参加しバンドとして活動を続けつつ、雑誌媒体での展開を増やしたり、新たなコミカライズが行われたり、といった展開を実施。2016年に入り、2月に正式な1stシングルが発表され、4月には1stワンマンライブを実施するなど、着実に活動を展開してきています。
そして7月には、2017年にテレビアニメの放送が決定(その後1月からの放送開始がアナウンス)したことが発表されると共に、「ブシロードと言えば」、のカードゲームでの展開も発表されています。
もちろん、ここまでの展開については、当初計画をした上でのスタートだったと思われますが、既に多くのファンを持ち、また様々なメディアミックス展開をしている「ミルキィホームズ」と上手く連動することにより、初期のファンを集めていき、土台を作ってきたということが見えてきます。その際に、バンドが1人のメンバーから立ち上がっていく様子を、ファンが実際に目に出来るように、徐々にメンバーを追加していくとともに、最初は「ミルキィホームズ」での出演からはじめ、外部イベントへの参加で場数を踏み、そしてワンマンライブへ、という、バンドとしてのステップアップを、ファンに見せるということにより、より応援したいという気持ちを生み出すことに成功しているのではないでしょうか。
そして、今回の東京ゲームショウのような大きなイベントで、新たな取り組みを発表して、さらに盛り上げていくことで、まさに今、一つのコンテンツ(ファンからすると自分が応援するキャラクターやバンド)が成功していく途中に、自分が参加しているんだ、という体験を提供しています。
実際に、今回のゲームショウでのイベントではバンド演奏も行われましたが、実際に、一生懸命演奏・歌唱しているメンバーと、それを応援するファンを見ると、作品きっかけではあるものの、“本物の”<バンドとそれを応援するファンの構造>が、そこにはありました。
「バンドリ!」の今後
今回の東京ゲームショウでは、Craft Eggが開発を担当するスマートフォンゲーム「バンドリ! ガールズバンドパーティー!(以下、“ガルパ”)」が発表されました。これは、いわゆる“音ゲー”ですが、「ラブライブ!」の「スクールアイドルフェスティバル(スクフェス)」よりも、さらに進化したゲームとなっています。
ゲームの特徴としては、リズムゲームパートだけではなく、アドベンチャーゲームパートも実装され、より、「バンドリ!」の世界観に浸ることが出来るようになっています。「アドベンチャーパート」では、バンドのメンバーである各キャラクターが、チラシを配ったり、楽器を買ったりするという、日常の活動もプレイすることが出来るようになっています。また、会話中のキャラクターは、Live2Dによって、非常に滑らかな動きと表情を楽しめるよう作り込まれています。ブースでも、各キャラクターがしゃべっている映像を見ることが出来ました。
「リズムゲームパート」も、凝った作りとなっており、最大5人でのリアルタイム協力プレイが出来る機能も実装されます。また、リズムゲームでチャレンジする楽曲も、本作品に登場するバンドのオリジナル曲の他に、アニメやボカロ等の曲をオリジナルアレンジでカバー。「空色デイズ」「魂のルフラン」「secret base ~君がくれたもの~」などの楽曲でのプレイが出来ることが発表されました。
また、「ガルパ」では、これまでバンド活動をしてきた作品の中心的バンド以外に、4バンド計20人のキャラクターが登場することが発表され、東京ゲームショウでは、そのうちの1つのバンドの担当声優が発表。17日のイベントにも登場しました。
「バンドリ!」プロジェクトから学べること
今回のゲームショウで、新たにスマホゲームが発表され、メディアミックスをさらに拡大していく「バンドリ!」ですが、企画段階から、ここまでプロジェクトを育て、運営していきてるということについて、これまでの経験やリソースがあるとはいえ、大変なことだと思いました。単なるコンテンツの展開だけではなく、実際の人がライブをしたり、そこにファンが来たりというリアル部分の運営には相当な労力がかかりますし、実際に、本当に応援をしてくれるファンをこれだけ集めることが出来ていることは、すごいことだと感じます。
頭でいろいろと企画をすることは出来ますが、ライブ運営からTwitterの運用まで、各現場の泥臭い努力と、各メディアにおけるプロフェッショナルでハイクオリティなコンテンツ制作能力とが相まって初めて実現出来るものだと思います。現場で、実際にファンと接するために、より一層、高いサービスレベルが求められもすると思いますが、それに応え続けることも、本当に大変なものだと思います。
ここまでしてきて、「バンドリ!」は、ようやく2017年からが、ビジネス面でも本格的な展開となっていく、つまりある意味スタートラインに立った、ということなのではないかと思います。
こうした活動を見ていくと、私も、業種は違えど、ビジネスプロデュースの立場から、学ぶべきところがたくさんあると感じました。これからも、「バンドリ!」の展開に、注目していきたいと思います。
BanG Dream!(バンドリ)公式サイト:http://bang-dream.com/
BanG Dream!(バンドリ)ガールズバンドパーティー!公式サイト:http://bang-dream.bushimo.jp/
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