こんにちは。アマナイメージズの細井です。絵画・美術コレクションのストック素材の担当をしています。アマナイメージズでは「創造性の黒子」を理念に掲げており、社員皆それぞれの分野で黒子としてお客様のクリエイティブをサポートすべく、探求の日々を送っております!私は権利関係が複雑そうな絵画・美術イメージを「より簡単に」「より安心に」お客様にご利用いただけるような取り組みをしております。そして、今日は「著作権が切れた絵画・美術イメージの使用」についての記事をお届けしたいと思います。

文 : 細井のぶ (アマナイメージズ・VMD事業/海外チーム)
写真:
©Musée d’Orsay, Dist. GrandPalaisRmn/Patrice Schmidt/AMF/amanaimages
©Mark Airs/Ikon Images/amanaimages

アマナイメージズは、100万点を超える豊富な美術イメージを揃えており、創業してから40年間で1万件ものシーンに絵画・美術イメージを提供してきました。書籍やテレビ使用はもちろんのこと、広告や商品化案件などにも幅広くご利用頂いています。絵画・美術イメージを扱う業界の中でも高く評価いただいており、その実績や豊富な経験をもとにお伝えしていきますね。

「著作権が切れていれば、改変して使っても良いですか?」

絵画・美術イメージを使った制作を検討したことがある方なら、一度は頭をよぎったことがあるのではないでしょうか。皆さん、魅力的な絵画イメージを安心に利用したいですよね。一方で「著作権が切れているなら自由に使える」と思われる方も多いのではないかと思います。

こちら結論からいうと、

「著作権は切れていても、著作者のご遺族や美術館の存在もあるので、トラブルを避けるために、印象を著しく悪くするようなレベルの改変は避けて頂いた方が安全」です。

もう少しシャープな回答が欲しいんだけど…というお声も聞こえてきそうですが、皆さんの理解がより深まるように、法的な観点も混じえてご説明をしていきます。
ちなみに『改変』とは一般的に「作品の要素を変える」ことを言います。例えば、この記事の冒頭に登場したフランソワ・ミレーの『落穂拾い』が某機械メーカーの広告で使用されたことがありましたが、その際、女性の腰に身体をサポートする機械商品が取り付けられました。こういったものが改変の例です。

では、まずは著作権の成り立ちを見ていきましょう!
いきなりお勉強っぽくなりますが…、著作権が関係していきますので、どうぞお付き合いください。 著作権の保護期間は、原則著作者の死後70年を経過するまでです。そして、著作権は「著作者人格権」と「財産権」の2つに分かれています。この「著作者人格権」の中にある「同一性保持権」の部分において、作品に手を加える『改変』が関係してきます。「同一性保持権」とは、自分の著作物の内容又は題号を自分の意に反して勝手に改変されない権利のことです。

【著作権】

著作者人格権 公表権、氏名表示権、同一性保持権を含む、著作者の「名誉」や「作品への思いれ」を守る権利
財産権 複製権や公衆送信権など、著作者の財産的な利益を保護する権利

「同一性保持権」が属する「著作者人格権」は、著作者の死亡とともに消滅しますが、死後も侵害してはならないとされています。そして、著作者の遺族や、著作者が指定した人達(下記)は、この「同一性保持権」を行使請求することが出来ることになっています。古い時代の絵画において、遺族が「同一性保持権」を行使したという話は、実際に耳にしたことはなく、なかなか起こらないことではありますが、法的な文脈で説明するとこういうことになります。

同一性保持権を行使できる人

  • 遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹)
  • 生前に著作者が指定した人(この場合は著作者の死後70年の間で、尚且つ上記の遺族が存命の間に限る)

そしてポイントは、この「死後も侵害してはならない」ということです。この一文があるため、手放しに、著作権が切れているから改変しても大丈夫だよとは言えないという状況があります。時の経過とともに、「同一性保持権」の行使請求ができる人は少なくなっていく状況はありますが、だからと言って配慮は不要ということではありません。法的な視点から説明すると、権利的な主張の話になりがちですが、つまりは「著作者のクリエイティビティをリスペクトしようよ!」という話で、皆さんが普段から共感するような話ではありますね!

ちなみにですが、我々アマナイメージズでは、現在もご活躍中の作家さんの写真やイラストも多く扱っておりますが、それらは美術館に所蔵されている絵画作品とは少し異なる類のものです。作家の方とは「同一性保持権を行使しない」という契約を結んでおり、”改変可を前提”として、お客様への画像ライセンスを提供しています。これはアマナイメージズに限ったことではなく、ストックフォトの契約では一般的なことです。一方で、レオナルド・ダ・ヴィンチさんとその昔、このような契約を結んでいる人は世界を探してもいないでしょう。

では上記を踏まえ、絵画や美術イメージを使う際にトラブルを防ぐためには、具体的にどのような注意をすれば良いでしょうか。

「ここまではOK、これ以上はNG」という明確な境界線はない。

改変を含めた使い方において、他者が断言できる「ここまでの改変はOK、これ以上はNG」という明確な境界線はありません。残念ながら明確な答えは、著作者の心の中にしか存在しないことを理解する必要があります。作品を所蔵する美術館でさえも、著作者の気持ちを大切にされている存在と言えそうですが、著作者の正式な代弁者ではありません。社会的事情の変動によっても人々の反応は変わってくるので、改変の程度については、その時の社会情勢や既に世の中に公開されている事例と照らし合わせて判断をしていくしかありません。

その上で、私たちが著作者に配慮するために大切なことを、3つにまとめてみました。

絵画にマイナスのイメージを与えるような改変はしない。

明確な境界線はないものの絵画にマイナスのイメージを与えないような配慮はしなくてはなりません。もはや訴える遺族がいない時代の絵画でも、ファンがSNS上で批判的なコメントをすれば企業のブランドにはマイナスになってしまいます。

絵画の原型を想起させないような大幅な改変はしない。

あくまでも絵画の良さを伝えるような使い方をすることが必要です。誰の何の作品なのか全くわからない状態で、素材のように切り貼りして使うのはトラブルの元になりやすいです。

著作権が切れていても、時代が後期のものほど、改変を加えずそのまま使うくらいの方がトラブルになりにくい。

時代が新しいものほど、財団が設立されたり、遺族の方などが精力的に保護活動をされている可能性があります。古い時代の作家のクリエイティビティは尊重しなくて良いというわけでは全くありませんが、新しい時代の作品ほど、改変について不快感を感じるレベルが厳しくなったり、不快感を示す人が多くなるのが現実です。著作権が切れたばかりの作品は、改変を加えずそのままご利用頂くのがおすすめです。

また、言わずもがなですが、著作権が切れていない作品については、使用許諾を取る際に、使い方について著作権者に細かく確認を取るべきです。1mm程度のトリミングでも、確認した方が良いでしょう。

まとめ:美術・絵画へのリスペクトが感じられるような使い方をしましょう。

これは、今までご説明したことを包括するようなことですが、とても大切なことです。アマナイメージズは今まで様々な案件に対応してきましたが、お客様にこれらのことを気を付けて頂くことで、『改変』にまつわるトラブルは今までありません。

判断が難しいグレーゾーンは残りますが、皆様が感じる改変に関する疑問や不安の背景について、お分かり頂けましたでしょうか。絵画や美術は先人が残してくれたアートなので、人の心が豊かになるような利用をしていきたいですね! 今日は一般論をお話しさせて頂きましたが、具体的に絵画イメージの使用についてご検討されているプロジェクトがございましたら、ご相談お待ちしております。

アマナイメージズでは、ルーヴル美術館・オルセー美術館(ともにフランス・パリ)など30館以上のフランス国立美術館のイメージライセンスを統括するフランス国立美術館連合グラン・パレ(Réunion des musées nationaux – Grand-Palais)をはじめ、大英博物館、ヴィクトリア&アルバート博物館(ともにイギリス・ロンドン)や、数多くの有名美術館、博物館と提携。さらには、世界中の美術専門フォトエージェンシーとのネットワークにより、クオリティの高い100万点を超えるアートイメージを幅広く提供しています。提携先からの許諾取得や、提携外でも柔軟に対応できるクリアランスサービスは、現代アートの権利許諾代行にも対応。画像取得と一緒にご要望に合わせて使用許諾の取得もサポートいたします。

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