日本には「伝統」と銘打たれる、世代を超えて受け継がれてきた職人技が数多く存在します。
芸能であったり工芸であったり、どのジャンルにおいても共通の悩みとして挙げられることの多い「後継者不足」「売上減少」。親から子へ、または地域で繋いできた産業を、もっと広い視野をもって日本へ世界へと伝承継承していこうとする取り組みが増えています。

若者にリーチする手段としての、ニコニコ超会議

2016年4月29日(金・祝)~5月1日(土)の2日間、千葉・幕張メッセを中心に開催された「ニコニコ超会議2016」。日本最大級の動画サービス「niconico」の巨大イベントで、2日間の会場来場者数は15万2,561人、会場からの公式生放送を視聴したユーザーは554万8,583人となりました。(主催者発表・取材は4月29日)

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ユーザーの約半数が10代・20代と言われるニコニコ動画。故にこのイベントは、これからの日本を担う若者たちにリーチするには格好の舞台。しかし、その舞台に入り込むのは単純なことではなく、若者文化・ネット文化への理解が不可欠と言えます。
今回のニコニコ超会議でただ文化にすり寄っていくわけではなく、真正面からぶつかっていったように感じたのが「歌舞伎」でした。「超歌舞伎」としてニコニコ超会議に初参加した今回は、歌舞伎役者の中村獅童さんと、ボーカロイドの初音ミクによる「今昔饗宴千本桜」が上演されました。3Dホログラム技術やAR技術など最新技術を駆使したステージ演出とのコラボで非常に話題になった今回ですが、実はもっと前から、歌舞伎と若者との融合は始まっていたんです。

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30年前のスーパー歌舞伎から始まっていた、現代との融合

スーパー歌舞伎と呼ばれる、伝統的な歌舞伎とは異なる演出による現代風歌舞伎が上演され始めたのは、今から30年も前の1986年のこと。3代目市川猿之助が、オペラ、京劇、小劇場など他の演劇スタイルを積極的に取り入れた独自の舞台を創出したのが始まりです。
昨年は四代目市川猿之助が「スーパー歌舞伎Ⅱ」として誰もが知っている大人気漫画「ワンピース」をテーマに上演し、プロジェクションマッピングやダンスなど、最新技術・文化と歌舞伎の融合に、多くの若者が熱狂したということです。

今回の超歌舞伎では、初音ミクが歌うボカロ曲「千本桜」と歌舞伎の演目「義経千本桜」、この二つの作品の要素をうまく融合させたストーリーを上演。
上演前には、歌舞伎を初めて観る若者でも楽しめるよう、「歌舞伎は江戸時代以来、庶民に愛されてきた大衆のための芸能です。芸術的なものだとか、むずかしく考える必要はありません」とアナウンスされ、屋号をよびかける大向う(おおむこう)の説明など歌舞伎の楽しみ方もしっかりと予習させてくれる時間が用意されていました。
また中村獅童さんの口上でも、ストーリーに入り込みやすいよう分かりやすい説明があったのと同時に、パソコンやスマートフォンなどの前で試聴しているニコ生視聴者に呼びかけをしているのが印象的でした。

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何を隠そう、筆者も実は今回が初歌舞伎。
最初はとまどいながら観始めていた観客たちが、演者や演出にのめり込み、涙ぐみ、盛り上がり、感情を揺さぶられているのが互いにわかるほど一体感に溢れていたように感じました。
歌舞伎が面白くないから若者が観に行かないのではなく、単に接点がないから観に行く機会がない。スーパー歌舞伎や今回の超歌舞伎は、その接点になり得る大きなきっかけなのだと思います。

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