本エッセイは、ライター・チャンワタシさんによる文章と、アマナイメージズ クリエイティブディレクター・松野正也によるフォトキュレーションでお届けします。
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人の味覚は面白い。
初めて食事を行く人に「嫌いなものある?」と聞くのは定番の質問だが、そもそも人それぞれに「嫌いなもの」があること自体がとても面白い。
幸い私には嫌いなものが一つもない。食べもの大好き。だからこそ、「◯◯が嫌いなのよね」のそれぞれの嫌いな理由を聞くたびに、そうきたか!と笑ってしまう。
「ナスが嫌いなのよね、つぶつぶしてるから」つぶつぶ?してるかなあ。
「トマトが嫌いなのよね、じゅるじゅるしてるから」んー、でもじゅるじゅるしてる食べもの、他にもたくさんあるような…。
「きのこが嫌いなのよね、ぐにぐにしてるから」ぐにぐに?感じたことなかった。
ピーマンは良いけどパプリカは嫌い。トマトは嫌だけどプチトマトなら食べれる。エリンギは好きだけどしめじは無理。
嫌いなものの、嫌いな理由が、本当に繊細すぎる。自分にはない感覚で、みんなはそれを嫌いだと言う。
友人とご飯に行った折、店選びに大変時間がかかって、話し合いのために一度、喫茶店を挟んだことがある。友人は野菜も生魚も肉も揚げ物も食べられなかった。困った困った。
世の中には、その身体は一体何で栄養をとってきたんだろう?と思う人がいる。少ない栄養素で同じ体が作られるって、人間もなかなかすごいなと感心する。
結局、「カレーの中に煮込まれてたら食べれるんだよね」の一言で、その日はカレーを食べに行った。友人はとても美味しそうに食べている。
生まれ変わったら、一度嫌いなものがある人間になって味わってみたい。
ナスのつぶつぶも、トマトのじゅるじゅるも、きのこのぐにぐにも分かる、その研ぎ澄まされた味覚を持ってみたら、目の前のこのカレーを、実はもっと美味しく感じるのかもしれない。
チャンワタシ(ちゃんわたし)
1990年生まれ。Webメディアの編集者をしながら、2017年6月よりフリーライターとしても活動中。取材記事・コラム・エッセイなどを手がける。日常の気づきを綴った『note』が人気。
Twitter:@chanwatac
note:https://note.mu/hoshinc
松野 正也(まつの まさや)
株式会社アマナイメージズ取締役。2007年グラフィックデザイナーとして株式会社アマナに入社、CI/VI開発・制作に携わる。2009年からamanaimages.comのWebデザイン・サイト運営を担当。現在は、主に広告制作マーケットに向けたストック商材のクリエイティブディレクションを担当している。