本エッセイは、ライター・チャンワタシさんによる文章と、アマナイメージズ クリエイティブディレクター・松野正也によるフォトキュレーションでお届けします。
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味の薄いコーヒーがすき。
コーヒーを家で飲むときは、いつもこれでもかというほど薄める。もう白湯でいいやん、と自分でも思う。
そんな私は、カフェに行くとたいていアメリカンコーヒーを頼む。薄くてさっぱりと飲めるアメリカンコーヒーは、飲んだ後も胃が軽くてすっきりするから好きだ。
あるとき、アメリカンコーヒーが豆の焙煎の浅いものであることを知った。それまで私は自分のようにてっきりお湯で割ってるのかと思っていたのだ。(本当に恥ずかしいほどに無知・・・)
知らないことはたくさんある。たくさんあるのに、知ってる気になるからだんだんとわくわくしなくなった。もしくは、知らないことを知ろうという意欲が薄れてきているのかもしれない。
25歳になったあたりから世の中わかったような顔をして、日常を「体験」するより「こなす」ようになってしまった。その結果、毎日同じルーティンの繰り返しで時間が過ぎるのが驚くほど早い。
小学生の頃は毎日が新しくて、パワフルでワンダフルで、見たことないような遊びを見つけることに貪欲で、どんどん吸収していた。春、夏、秋、冬、どの季節もしっかり満喫していたし、春がきたら夏、夏が来たら秋、次の季節の楽しさをちゃんと分かっていた。
今となっては同じことをやってる方が心地が良い。新しいことって疲れるし、新しい場所に行くのってとてもめんどくさい。
やるぞー!いくぞー!と思うまで、どうしてこんなに腰が重いのだろうか。だけどそのせいで今まで捨てたチャンスはどれくらいあるのだろうか。
小学生のときに、校長先生が全校朝会で言っていたことを思い出す。
「私の今年の抱負は、365日毎日新しい人に出会って、365人の新しい友達を作ることです」
60歳の校長先生が毎日の出会いを楽しみの一つにしていたことを、26歳の今となってはめっちゃええやんそれ!と思える。15年越しのメッセージだ。
そんな風に歳を重ねることが出来たらとても素敵だなあ。と、薄いコーヒーを飲みながらしみじみと考えた。
チャンワタシ(ちゃんわたし)
1990年生まれ。Webメディアの編集者をしながら、2017年6月よりフリーライターとしても活動中。取材記事・コラム・エッセイなどを手がける。日常の気づきを綴った『note』が人気。
Twitter:@chanwatac
note:https://note.mu/hoshinc
松野 正也(まつの まさや)
株式会社アマナイメージズ取締役。2007年グラフィックデザイナーとして株式会社アマナに入社、CI/VI開発・制作に携わる。2009年からamanaimages.comのWebデザイン・サイト運営を担当。現在は、主に広告制作マーケットに向けたストック商材のクリエイティブディレクションを担当している。