働き方は十人十色。
同じ企業で働いていても、たとえそれが同じ部署であったとしても、仕事のとらえ方は人それぞれだ。

仕事をしていると、楽しさや達成感を覚える瞬間は少なく、
辛く、苦しい時間の方が長いかもしれない。

正直、仕事のことを積極的に考える気が起らない時もたくさんある。
しかし、1日の3分の1を仕事に費やしているのならば、
自分の働き方をとことん考える時間を作ってみてもいいのではないだろうか。

「仕事にトキメク100のこと。」は、この春から社会へと踏み出した筆者が、広告に携わるクリエイタ―やマーケッターに、仕事の内容や、仕事に対する考え方、成功したことや下積み時代のお話を伺い、その中から仕事にときめくための100の方法を見つけていく連載企画。毎回インタビューの最後に、学んだ方法を紹介する。

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第5回のインタビューのお相手は、ランサーズ株式会社の幸村潮菜さん。ランサーズは「仕事を依頼したい人」と「仕事をしたい人」をマッチングする国内最大級のクラウドソーシングサービスを運営しており、幸村さんは事業開発部の部長として、デジタルマーケティング支援サービスの責任者を務めている。

自らを“マネジメントの人”と呼び、様々な事業を立ち上げ、大きくしてきた幸村さん。今回は、デジタルマーケティングについて、かつて通っていたビジネススクールについて、そして女性としてどのような考え方を持って生きているかについて伺った。

 


 

――さっそくですが、幸村さんの現在のお仕事の内容について教えてください。

今は、ランサーズ株式会社の事業開発部の部長をしています。ランサーズの事業ポートフォリオはふたつあって、ひとつがプラットフォームの事業です。仕事を求める働き手に対し、オンライン上で企業が手軽に仕事を発注できる日本最大級のクラウドソーシングプラットフォームを運営する事業がベースにあります。もうひとつが企業に代わってランサーズの社員が働き手のディレクションを行う事業。こちらは事業ドメインをデジタルマーケティングに絞り、クラウドソーシングを活用したデジタルマーケティングの支援サービスを立ち上げています。私はその責任者をやっています。

 

――責任者をやられているデジタルマーケティング領域についてお伺いしたいのですが、いま注目されているコンテンツマーケティングの支援もやっていらっしゃいますよね。私自身もコンテンツマーケティングについて勉強中なのですが、幸村さんが企業のコンテンツマーケティング支援を行う時に気をつけていることはありますか?

まず、コンテンツマーケティングって、よいコンテンツを作っていればそれでいいってわけではない。あくまでマーケティングのひとつの手法なので、誰に対して、どんなことを伝えて、その結果どうなったのかを仮説検証する一連のプロセスの設計が必要です。だから、その商品やサービスを知って欲しいお客さんは誰なのか、そのお客さんが知りたいことは何なのか、どのタイミングでどうやって伝えるか、ということを整理するところからコンテンツマーケティングは始まっていきます。そこが戦略設計の最初の部分で大事だと思います。

あとは、実施する目的に応じた効果測定の設計をすることも重要ですね。よく見るのは、とりあえずKPIをPVに設定しコンテンツを数多く制作してきたものの、狙ったセグメントにリーチ出来ているかはわからない、というようなケース。すべての施策に共通することではありますが、目的に応じたKPIの設定と効果検証の方法を選択することが重要だと思っています。

 

――コンテンツマーケティングを含め、デジタルマーケティング支援の仕事のどういった部分に面白さを感じていますか?

まず、どんなによいプロダクトやサービスでも、作っただけでは売れないですよね。(経営学者の)ドラッカーもいっているように、企業が成果を出すためには「イノベーション」と「マーケティング」、その両方が必要だといっています。

そして今、一般の消費者はもちろん企業の購買担当者でさえ、情報収集とか購買行動がデジタルへシフトしています。買い手の行動が変化していく一方で、売り手である多くの企業のマーケティング活動がそれに追いついていないと感じています。

私はネット業界が長いのですが、昔から問題意識は変わらなくて「企業が収益を上げるためにいかにデジタルを活用するか。そのときマーケティングはどうあるべきか」ってことで。だから、これまでの知見を活かしながら、デジタルを活用したマーケティングに取り組む企業をサポートする、そんなサービス開発をしていくことはとても意義があることだと思っているんですよね。

 


 

ベンチャーの1年は大きな会社の3年くらいのイメージがあって…。あれ、そう思うと、私20年ベンチャーで働いてるってヤバくないですか?一体何年働いてんだって話ですね(笑)!

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――ランサーズ以外にも、これまで様々な企業で働くことを経験されてきた幸村さんですが、今までで一番面白かった仕事はなんですか?

私はベンチャーの人なので、市場を作ることが面白いんです。これまで勤務した企業すべてが上場前後のタイミングで入社しているので、世の中にあまり知られていないビジネスモデルやサービスの価値を市場に広めていくことが重要課題のフェーズでした。

例えば、楽天に入社したころ。昔は「ECってなんですか?」って言われてたんですよ。「Eコマースの略でして…」って言うと、「Eコマースってなんですか?」って言われる。ひと通り仕組みを説明するんですけど、終いには「クレジットカード登録なんて情報漏洩が怖くて、そんなサービスは誰も利用しないでしょ!」って言われる時代だったんです(笑)。そんな状況からスタートして、お客さんに価値が伝わって、そのサービスが使われて、だんだん市場が作られていく。そのプロセスそのものが面白いと思っています。

 

――逆に今までの仕事の中で一番辛かった仕事はなんでしょうか?

うーん。なんかもう辛いとかよくわかんなくなってきてるんですよね(笑)。もう麻痺しちゃってるんですよ(笑)。上手くいかないことがあっても、課題を見つけて、打ち手をうつ。その繰り返しです。

 

――なぜずっとベンチャーなんでしょうか?

私、欲張りなんです(笑)。いろいろなことをやってみたい。それでいうと、ベンチャーで得られる経験は同じ1年でも大きな会社の3年くらいのイメージがあって…。あれ、そう思うと、私20年ベンチャーで働いてるってヤバくないですか?一体何年働いてんだって話ですね(笑)!

でも、それくらい濃い時間を過ごせるので、楽しいですよね。ベンチャー=成長している会社なので、2、3年すると、全然違うステージの課題が出てきたりしますし、会社が大きくなるにつれ、世の中がその会社に求めるものが変わっていきます。

楽天の時がまさにその状態でした。企業の成長に、自分の成長を合わせていかないといけない。ついていくことができれば、権限も増えていろんなことが経験できるというのが、ずっとベンチャーで働いている理由ですね。

いわゆる日本の大きい会社だと、私の歳ぐらいで「やっと管理職になった」っていう頃だと思うんです。そして、女性だと管理職になれるのかっていう問題もあるかもしれない。それに比べるとベンチャーはすごくシンプルで、「できる奴は誰だ」、「できる奴なら誰でもいい」っていう話なので、私はそういう方が性に合っていると思ってやってきました。

 

――スピード感や経験量が魅力になっているんですね。ベンチャー企業で働く中で、独立しようと思ったことはなかったんですか?

それは高校生の時くらいから考えてます(笑)。実は、私の父も母も40代で起業していて 「自分で会社を経営することはとても大変なことだけど、とてもすがすがしいんだ」って言っている親の姿を見て育っているので、常に独立するネタは考えてはいます。もう趣味に近いです(笑)。

ただ、私は起業家ってタイプではないんだろうなと最近は思っています。私の周りの起業家は後先あまり考えずにとりあえずやっちゃう人が多い。でも、私は「サービスやるなら何がいいかなぁ?」ってビジネスモデルばかり考えている。いつかやるかもしれないですし、もしかしたら「0→1」より「1→10」のフェーズの方が得意なのかもしれませんね。

 


 

同期もみんな頑張っていて、その活躍も刺激になりますし、時にには助け合うこともできる。ビジネススクールに通ったことは勉強以外でも、とても価値があったなと思います。

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――大学卒業後、就職して、そのあと一旦ビジネススクールに入られてますよね。ビジネススクールに入ろうと思ったきっかけはなんだったんですか?

ビジネススクールに入る前、私は楽天の事業部長になっていて、社長の三木谷さんと直接話す機会も増えていたんです。でも、その時間は自分の視座の低さを実感することに繋がります。三木谷さんの下した判断の意図が汲み取れないことがよくあったんですよ。なので、もっと勉強しなきゃいけないって思ったのがきっかけのひとつですね。

あとは、30歳を過ぎていたので、結婚もして今後子供を産む可能性も考えたときに、自分のために時間もお金も自由に使える時間はそれほど残されていないと思い、タイミングは迷いませんでした。

 

――ビジネススクールではどのような研究を?

ビジネススクールではマーケティングを専攻し、『E-Loyaltyに関する一考察 –消費者購買行動の分析を中心に-』という論文を書きました。簡単に言うと、「インターネット上の購買行動においても、単純な価格政策だけでなく、ロイヤリティを高めることが企業の売上や収益性を向上させるために重要だよね」という仮説検証をしたものです。たとえば、同じような商品で他店の方が価格が低いことがわかったとしても、馴染みの店を選んで買っていたり、その店を信頼しているから他の店舗はそもそも行かずに、ずっと同じ店で買い続けているというような消費者像が見えました。そういうことってリアル店舗では多くの人がやっているけれど、オンラインでもあって。やはり、どんな形態のビジネスでもロイヤリティをいかに高めるかというのは大事なことだと再認識しました。

 

――一緒に学んでいた方たちとはどのような関係でしたか?

100人いて、全日制だったんです。ビジネススクールって夜間だけのところも結構あるんですけど、私が行っていたところは、みんな勤めている会社を一旦辞めるか、休職をして2年間通うんですよ。

毎日朝から晩まで一緒に生活するので、すごく仲良くなるんです。誰がどんな強みを持っていて、どんな人物なのかもよくわかる。大人になってからたくさんの優秀な人たちと利害関係のない仲間になれる機会ってなかなかないですよね。

 

――そこでの繋がりが、再び働き始めたあとも重要になる時もありますよね。

そうなんですよ。 例えば、女性だけの縦の繋がりもあって、私は31期生なんですけど、この間11期生の方と会ったんです。その方は今、ビジネススクールで同期だった方が社長をやっている会社の子会社で社長をやっているんですって。こんな感じで女性の経営人材のロールモデルが身近な存在で、仕事もプライベートも相談できたりする。 もちろん同期もみんな頑張っていて、その活躍も刺激になりますし、時にには助け合うこともできる。ビジネススクールに通ったことは勉強以外でも、とても価値があったなと思います。

 


 

子どもがちゃんとコミュニケーションを取れるようになった時、ちゃんと対話ができる、示唆を与えられる人間になっていたいと思ったんです。

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――今、女性の繋がりの話がありましたけど、女性として社会に出て働くことに関してどのように考えを持って働いていますか?

そうですね。それに関してはいろんな価値観があって、どんな考え方があってもいいと思っているんです。私みたいな仕事中心の生き方がいいって主張したいわけでもなくて、女性は選択肢も多いので、どんな選択肢でも自分のやりたい道を選択するのが一番いいと思っています。

 

――幸村さんはどのような道を選択したのでしょうか?

私の場合は、小さな子どもも育てながら、マネジメント職を続けるっていう選択肢を取っています。なぜ仕事を辞めないのかというと、ずっと子どものそばにいることも一つのあり方だと思うんですけど、私は子どもがちゃんとコミュニケーションを取れるようになった時・・・それは小学校の高学年かもしれないし、中学かも高校かもしれないし、もっと先かもしれないですけど、その時に、ちゃんと対話ができる、示唆を与えられる母親になっていたいと思ったんです。いつまでも彼のよき相談相手でありたいし、彼が何か困ったときに支えることができる自分でありたかった。そうするには仕事を辞めずに、自分ももっといろんなことを経験して、私自身も人としてもっと磨かれなければならない。それはいいことばっかりじゃなくて、辛いことも経験することで、子供に与えられるんじゃないかって、私はそういう思いを持ちながら働き続けているんですよね。

 


 

何を聞いても次から次へと自身の考えを答えてくれる幸村さん。社会に出たあとも、ビジネススクールに通ったり、仕事と子育てを両立したりと、バイタリティ溢れる幸村さんのお話からは、「こうなりたい」という強いビジョンが感じられ、お話が終わったあと、筆者も自分どうなりたいか、何を実現していきたいかを自然と考え始めていた。

ライフステージが進んでいくと、考え方や働き方も変わってくるはず。
答えはひとつではないからこそ、自分なりの働き方を考え続けることが大切なのではないだろうか。

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今回の仕事にトキメク100こと。

  • 21.自分の働き方は自分で決め、働き方に応じて環境を選ぶ
  • 22.いつ、誰に、何を伝えるか、まずは徹底的に考え抜く
  • 23.学習欲には貪欲に
  • 24.人との繋がりがいつの日か自らを助く
  • 25.自由で好きな選択を!

(回を追うごとに追加されていきます。)