前半ではヒロ杉山さんから「これからのイラストレーターに必要なこと」をお聞きいただきました。後半からはさまざまな人とのクロスセッションが行われます。
ヒロ杉山氏 × 白根ゆたんぽ氏「第一線で活躍し続けるには?」
庄野:白根さんのイラストレーターになったきっかけを教えてください。
白根:僕は桑沢デザイン研究所にいた頃のコンペブームがきっかけです。自分もいろいろとコンペに出していたのですが、大賞を取っている人に憧れを持つようになりました。その頃からデザインよりもイラストを描いて自分の名前で仕事ができるようになったらいいなという思いが生まれました。
最初は誰かのアシスタントで下積みをして独立するのが普通だと思っていました。でも、自分の作品をヒロさんに見せに行った時、ちょうどヒロさんも独立したばかりで「1人でやりなよ」とアドバイスを頂きそのまま独立したんです。その時仕事を回してくださったり、忙しいときにはヘルプをしたりと関係が続いていきます。
ヒロ:当時は、テレビ現場で使う大きな絵の仕事がよくありました。NHKの番組で桑田佳祐さんが歌うときの背景画なんかを作ってもらったり。小さいイメージを描いて、それを大きな壁に写す作業になるんですが、白根さんはそれが上手だったのでよくお願いしていました。
ユニットの仕事は、作業に楽しさを与えてくれる
庄野:白根さんはどのようにしてお仕事をもらっていたのでしょうか?
白根:僕もヒロさんと同じで好きなイラストレーターさんに作品をみてもらっているうちに、その人がまた好きな人を紹介してくださりそこから仕事をもらっていたりしていました。僕も自分の絵をほめてくれたり、わかってくれそうな人に見せたりしていましたね(笑)
ヒロ:当時は営業ツールがなかったから持ち込みしか方法がないよね
白根:僕はフリーペーパーの編集部にも出入りしていて、イベントの手伝いとかをやっているうちに雑誌の中の企画記事の担当もするようになりました。もう本当に小さいきっかけをいっぱい重ねて今に至る感じです。
庄野:2人の共通点は非常に活動量が多い印象を受けるところです。お2人ともユニット活動が非常に活発ですがユニットを組むきっかけってあったりしますか?
白根:きっかけとは違いますが、元々ユニットで組んでる人たちが多くて憧れていたのもあります。イラストは基本1人でやるものですが、他の人とやったり、ライブドローイングで地方に行けたり普通の作業とちがう事をやれるのが楽しくてユニットを組んでいる感じです。
ヒロ:私は雑談からのはじまりが多いですね。気心知れた人と何か作りたいって流れですかね。仲の良い人と楽しく別ベクトルで制作したいと思って組むことが多いです。ユニットで活動するなら、面白いと思ってもらわないといけないと思うので、カッコイイものを作りたいなと思って活動しています。
さまざまな文化をカッコよく見せるのがイラストの役割
庄野:今のイラスト業界ってどう思われていますか?
ヒロ:今イラストレーションが一番冷えている時期かなと思っています。これまではイラストレーションは技術職だったんですが、Macが出てきたことで、技術が無くても描けるようになりました。昔と違うのは強い作家性は求められて無くて、センスが良いけど作家性が薄いものが求められてきているように感じます。
白根: 昔は才能のあるイラストレーターは雑誌で紹介されて知ることが多かったのですが、今はネットで才能の有無を問わず、同列に発表されてしまいます。そうなると才能がある人の見分けがつかないようになっていると感じますね。今は一般の方が好きか嫌いかでイラストレーターの良さが決まっていて、雑誌の編集者やアートディレクターが見出していたイラストレーターの価値が下がっているように感じます。
庄野:昔はプロの目で、選ばれたイラストだけが世に出ていたけど、いまは発信次第では誰でも見られるのが大きいですね。イラストレーターになろうというよりは、イラストを描いていた結果、人気がでちゃってそれで仕事にする、という活躍の方が増えてきましたよね。
庄野:最後にみなさんがイラストレーターとして大切にしていることをお聞かせください。
ヒロ:モチベーションですね。ルーティーンにはいっちゃうと、同じ絵をシチュエーション変えるだけで何回も描かなければいけないというのは、お金にはなるけど、作家としてのモチベーションがどんどん落ちちゃうんです。そういう絵は、やっぱり人にわかっちゃうし、それを続けていくと仕事も減ってくる。常に変化を求めて、変化を恐れずに変えていく。作家というのは止まってちゃいけない。今日描く絵がどんなものになるか分からないという気持ちで描くと、モチベーションが高まる。モチベーションの高い絵は魅力的なものになるしそれを評価するひとも増えていく。お客さんが満足する形の中で、ちょっとだけ変化を入れる。気づかれない程度でもよいから、そういうのがモチベーションになります。
白根:イラストは様々なカルチャーと密接に繋がっていて、それを世の中にカッコよく見せる役割が必要だと思います。
ヒロ杉山氏 × 白根ゆたんぽ氏 × ニシクボサユリ氏 × アマナイメージズ 松野正也 × ヴィジョントラック 庄野裕晃
「イラストレーターはSNS時代にどう向き合うべきか?」
パネルディスカッションのパートではこれまでのメンバーに加え、ニシクボサユリさんとアマナイメージズ松野正也を迎え、SNSとイラストレーターの関わりについてお話いただきます。
庄野:みなさんがどんなSNSをどのように活用しているのかを聞いてみたいと思います。
まずは、みなさんのInstagramを見ていきましょう。最初にニシクボさんから、ニシクボさんはInstagramをどのように活用されていますか?
ニシクボ:簡単に更新できるため、1日1枚は見せたいなと思って、アップしています。最新のものを見たいという場合はInstagramを見てもらうのが一番早いですね。
庄野:フォロワー数が増えたきっかけはありますか?
ニシクボ:爆発的に増えることは無かったです。フォロワー数が多い人にコメントしたり、撮影している写真をイラストで描いてもいいですか?とお願いして、そのイラストを気に入ってもらえるとシェアしてもらえてました。そうするとたくさんのフォロワーの方にも見ていただけてフォローが増える、、、小技を使ってました(笑)
庄野:Instagramで仕事はとれますか?
ニシクボ:いただけますね(笑)企業側もInstagramをかなり見ているようで企業の方からもお仕事の話を頂けたりします。
庄野:白根さんはいかがですか?
白根:フォロワーは個展がきっかけで増えている感じです。来てくれた方に聞くと、最近はInstagramを見て来てくれる方が多くなっています。
庄野:ヒロさんはいかがですか?
ヒロ:僕は海外のアーティストの状況を知りたくてはじめたので、フォロワーは海外の方がほとんどです。国内の方はFacebookで見ていて、Instagramは静かに楽しむために利用しています。過去の未発表作品を出したりして懐かしさを感じています。Instagramは当初、写真ばっかりだったのですが、途中からイラスト作品をあげてもいいなとおもって自身のギャラリーにしました。
庄野:アマナイメージズではInstagramは活用されていますか?
松野:作品の仕入れという観点でInstagramなどSNSを見ています。みなさんの作品はそれぞれしっかりとした個性が出ていて、素晴らしいポートフォリオになっていますよね。
ヒロ:そうですね。なんか世界中のポートフォリオを見られるというか、、SNSを通じて世界がぎゅっと近くなった気がしますね。そういった世界にリアルタイムで繋がれるところが魅力ですね。
松野:SNSを通じて仕事へのインスピレーションを得ることってありますか?
ヒロ:始まったばかりの海外の個展などがすぐに見られることは大変刺激になっていますね。
白根:若い世代がどんな使い方をしているかは見ていますね。いい仕事をしていると落ち込んじゃいますが(笑)
ニシクボ:私の場合は他のイラストとかは見てないですね。音楽やファッションなどをチェックしています。普通の日常です(笑)
松野:ところで、最近イラストが活躍する場としてLINEなどのスタンプが挙げられますよね。アマナイメージズでもiMessageで北斎スタンプをリリースしたりしたのですが、そのような発表の場についてご意見を聞かせてください。
白根:仕事の依頼はあります。自分でも作りたいとは思うんですけど、若い子のノリに負けちゃうきがして(笑)
庄野:最後に参加してくださった方へのメッセージをそれぞれお願いします。
ニシクボ:SNSを続けてきたから、出来たことがたくさんあります。繋がりを大事に、発信を続けていくことが大事です。一緒にがんばりましょう!
白根:イラストの業界は状況が目まぐるしく変わるので、信念を持って仕事をすることが大切です。
ヒロ:絵を描くことは魅力的な職業です。イラストレーションを仕事として捉え過ぎず、もっと楽しんでイラストレーションを捉えるともっと魅力的になると思います。
松野:前半のレビュー会ではたくさんの作品みさせていただきましたが、本当に才能のある方ばかりで感心しました。なかなか思うようにいかないこともあるかと思いますが、弊社のサイトを自分のプロモーションの1つとして考えて活用していただければと思います。
最後に
今回のレポートには記載できない会場だけのお話や、イラストレーションの最前線にいる4名に自身の作品を見ていただくレビュー会など充実した内容のセミナーとなりました。
今後もイラストレーターさんへ有益な情報を発信すべくセミナーやPORTFOLIOの記事を定期的に上げてまいりますので今後ともご期待ください!
おまけ:ポートフォリオレビュー会と懇親会の様子