VR元年に際し、PORTFOLIOではこれまでもVR関連情報を多数お届けしてきました。今回は、これまでにアニメ「シドニアの騎士」を手掛けられ、現在は講談社とのVRプロジェクト『VR Idol Stars Project「Hop Step Sing!」』の制作を担当されている株式会社ポリゴン・ピクチュアズの石丸健二氏、「シドニアの騎士」VRコンテンツ「継衛発進体験装置」や、「ガジラVR」、「VR面接」など様々なVRコンテンツを手掛ける面白法人カヤック・VR部の原真人氏に、これまで手掛けられた作品のお話を踏まえながら、現在、そしてこれからのVRの可能性についてお話いただきました。

果たしてVRの最前線に立つお二人は、どのようなことを考え、今後のVRの行く先をどのように思い描いているのでしょうか。

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原氏(左)、石丸氏(右)

――まずはお二人がこれまで手掛けられたお仕事や現在やっているお仕事を含め、自己紹介をお願いします。

石丸氏:ポリゴン・ピクチュアズのプロデュース部に所属しており、プロデューサーとして仕事をしています。代表作としては「シドニアの騎士」、その続編である「第九惑星戦役」があります。他にも、東京ジョイポリスのステージリニューアルのアートディレクション、ソニーミュージック「世界の絵本から」の制作、弊社が出資もしている「げんきげんき ノンタン」OVAシリーズのプロデュースなど、幅広いジャンルの案件を手掛けています。最近は講談社さんの「Hop Step Sing!」というアイドルVRコンテンツの制作を担当しました。

 

原氏:現在、面白法人カヤックVR部に所属しています。カヤックには元々Flashエンジニアとして入社して、フラッシュエンジニアを担当したあと、iOSエンジニア、Unityエンジニアとキャリアを重ねて、現在はVR部部長として、部をまとめながらVRコンテンツの企画・制作を行っています。

石丸さんとの出会いは、人気TVアニメ「シドニアの騎士」のVRコンテンツ、継衛発進体験装置の企画・制作を担当したことがきっかけです。開発に携わったVRコンテンツは他にも「ガジラVR」や「VR面接」があります。先日の東京ゲームショウ2016では、Wargaming Japanブース内で展示された、戦艦「大和」に搭乗したような気分を味わえるVRコンテンツ「VR Special photo zone YAMATO」の開発もお手伝いさせていただきました。

 

――ありがとうございます。では、お二人の共通点でもある「シドニアの騎士」についてお伺いさせてください。まずは、原さんが継衛発進体験装置を担当することになった経緯を教えていただけますか?

原氏:元々は、知人に「シドニアの騎士」の制作委員会の方を紹介していただいたというところから話が始まりました。最初はキングレコードの担当の方に会いに行ったんですけど、自分で1シーンをラフに作って、「こういう感じのVR体験どうですか」って提案したんです。そうしたら、それを見た担当者の方がいいねと言ってくださって。そのあとポリゴン・ピクチュアズさんにお邪魔して、石丸さんに、さらに原作者の弐瓶勉先生に見ていただいて、企画が始まりました。

 

石丸氏:僕自身は、その時はまだVRを体験したことがなかったんですよ。なので、原さんが作ったものを見せてもらう時には「新しいものが見れる!」と思ってすごく楽しみにしていました。

最初に見せてもらった時点では、弊社が作ったデータはお渡ししていなかったにも関わらず、継衛が発進していくシーンがすごいクオリティで作られていて、「あれっ、モデルデータ渡してたっけ?」と疑うほどでした。ここまでやっていただいているのであれば、ぜひシドニアの実際のデータを使って完成させて欲しいと思いました。

 

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原氏:僕自身は、弐瓶先生の世界観自体が唯一無二だと思っていたんですけど、アニメは単純にその世界観を再現するだけでなく、高みにいっていると思いながら見ていました。これをVRにできれば、とてつもない興奮が味わえるんじゃないかと思いながらVRを作ってましたね。

 

石丸氏:そこまで言っていただけると、とても嬉しいですね。「シドニアの騎士」のTVシリーズ企画を立ち上げた時に、シドニアの世界の中に行きたいと思ってもらえるコンテンツにしたいと監督と話していました。シドニア特有の不思議な空間がシドニアの大きな魅力との一つだと考えたからです。

 

原氏:弐瓶先生の世界観はものすごく緻密なので、すべてを再現することは難しいとは思うんですけど、漫画を読んでいる人の中に、この世界観をVRで体験できたらいいなと思っている人がたくさんいるんじゃないかと思っていたんです。VRとすごく相性がいいというか。

でも実際にVRコンテンツにできたのは、アニメが3DCGで作られているからというところが大きいですね。VRになった時のことも想像しやすかったですし、 さっき石丸さんが仰っていたように、元々見る人にシドニアの世界観に行ってみたいと思ってもらうことを想定して作られているので、実際にそう思うシーンがたくさんあって、第一人者に近い視点でいろんなシーンが展開されていくんです。継衛の発進シーンもまさにそれで、コクピットの中に入っているような気分にさせられるシーンがたくさんあったので、その一部分を切り取って、VRの方でも使わせてもらいました。

 

石丸氏:他のシーンは考えず、迷わず発進シーンを選んだんですか?

 

原氏:いくつか選択肢はあったんですけど、アニメの発進シーンを見た時、段違いの発進シーンだなと思っていたんです。僕自身発進シーンというものにとても思い入れがあって、「数年前にいい発進シーンを見たけど、それを越える発進シーンを最近見てないぞ」っていう感覚すらあったくらいなんですよ(笑)。そんな僕にとって、これ以上ない発進シーンが継衛の発進シーンだったので、それをVRで体験した時に、作品の魅力をより感じてもらえるんじゃないかと思ったんです。

もちろん発進シーン以外にもシドニアの内部が広く見えるシーンや水族館に行くシーンなど、魅力的なシーンはたくさんあるので、できるのであれば全部やりたいと思うんですけど、どれか選ぶとしたら、やはり発進シーンになるんですよね。

 

――石丸さんは、できあがった継衛発進体験装置をご覧になっていかがでしたか?

石丸氏:僕は、Engadget 例大祭に継衛発進体験装置が出展された時に拝見しました。最初に見せてもらったものよりさらに進化していて、発進のタイミングをボタンで決めることができたりと、作り込みのレベルがさらに上がっていたんです。最初見た時もすごいと思っていましたが、そこから弊社がお渡ししたモデルデータに変わって、SEが加わり、さらに「これがシドニアか」という台詞が入りと、とても進化していた。これはどこまでレベルアップしていくんだろうと期待感がすごく高まりました。VRは情報量が増えることで臨場感が高まることを勉強させていただきました。原さんとカヤックさんのおかげです。

 

原氏:僕自身、どこをゴールにするかは明確に決めていたわけではなくて、思いつきの部分も多かったんです。継衛は、発進するときのエンジンとジェット噴射の爆音にすごい迫力があるんです。さらに、発進してカタパルトから宇宙に飛び出すと爆音がスパッと消えて、空気が震える音だけが残ります。これらの音は、普通に聞くだけでも臨場感があるのですが、試しに「振動モジュール」という音を拾って振動に変換するデバイスとつないだところ、単に「臨場感」という感覚を超えて、まさに「あ、飛行機に乗ってる時こういう感じだ」という体感の記憶が呼び起こされるほどのリアルな感覚を得られました。振動モジュール自体はVRのコミュニティで流行っていたので試しに使ってみた、くらいのノリだったのですが、想像以上に相性がよかったですね。

 


 

キャッチボールと言うか、ハードウェアとソフトウェア両方が歩み寄りながら進化していければいいなと思います。

 

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――今のVRの盛り上がりについて、お二人が思うところがあれば教えてください。

原氏:盛り上がってくると思ってはいたんですけど、自分が思っていたより上を行っていますね。今年のゲームショウもVRが主役という印象が強くて、1年前のゲームショウと比べても、VRの波が来ているなというのは感じます。まだ投資段階の企業が多いとは思いますけど、開発もかなり進んできていると思います。

 

石丸氏:シドニアでお世話になっていた時、原さんが六本木で開催されたVRイベントに伺ったんですが、その頃はハードウェアの選択肢も少なくて、世に出ているコンテンツの質も決して高いとは言えず、まだまだユーザーからお金を取れるレベルではないものが多かった。でも、僕はそのイベントに参加したことでVRの可能性を感じて、その頃からVR関連で気になるイベントがあれば積極的に参加したり、コンテンツを体験したりし始めました。けれど、それでもまだどのようにして消費者に広がっていくのか、なかなか想像しづらかったんです。

でも、「これ面白そうだぞ」と言ってお金を払って楽しんでいる方も増えてきていますし、原さんが仰ったように盛り上がりは尋常ではなくなってきているので、これからブレイクスルーしていくかもしれません。ハードウェアの開発もどんどん進んでいて、投資もされていると思うので、ゴーグルのサイズが眼鏡くらいに軽くなったら、あるいは眼鏡をかけている人もゴーグルを使えるようになったら、より多くの人に浸透していくのではないかと思います。

 

原氏:今のVRは希少価値というか、ここでしか体験できないことへの渇望に支えられているような印象があります。でもこのフェーズはもうすぐ終わると思うので、終わった時にどうなるかですよね。石丸さんが仰ったように、ハードウェアの進化が次のフェーズに耐えられるようにできているかが気になるところではあります。恐らく各社現状の次のバージョンを考えていると思うんですよ。VRそのものではないですが、この間PlayStation4の新しいバージョンがいきなり出たということもありましたしね。

 

――家庭で使えるハードウェアが発展していくと、コンテンツの方も充実してきますよね。

原氏:そうですね。今、VRを短い時間しか楽しむことができない理由はコンテンツの設計もそうですし、ハードウェア自体が長時間装着できるものではないという面もあると思います。長時間装着することはできないけど、1時間でもプレイしたいというコンテンツが出てくれば、それはそれで成功だと思いますし、逆にようやく1時間装着できるハードウェアが出てきたから、それに合わせてコンテンツを作るということもあると思います。そのキャッチボールと言うか、ハードウェアとソフトウェア両方が歩み寄りながら進化していければいいなと思います。

 


 

後編では、現在石丸氏が制作を担当されている「Hop Step Sing!」について、そしてお二人が考える、これからのVRに求められることや可能性について伺っていきます。

 

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