マイ・ダンス・ウィズ・ウルブス｜「地球に生きる」― Minden Pictures ストーリーセット

ワイルドライフ写真の金字塔！オオカミと過ごした日々をブランデンバーグが語る

※この記事はamanaimages.comで過去に掲載されたものです

作家プロフィール

ジム・ブランデンバーグ　Jim Brandenburg
アメリカ、ミネソタ州在住。自然と生物を専門とする写真家、映像作家。ミネソタ大学でスタジオアートを専攻、その後Worthington Daily Globe紙の写真編集者をつとめつつ、ナショナル・ジオグラフィックのフリーランスカメラマンとなった。1981年と1983年にNPPAのマガジンフォトグラファー・オブ・ジ・イヤーに選出され、1988年にはロンドン自然史博物館とBBCワイルドライフによるコダック・ワイルドライフフォトグラファー・オブ・ジ・イヤーにも選出されている。特にオオカミを題材とした作品は高く評価されている。

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マイ・ダンス・ウィズ・ウルブス

写真／文　ジム・ブランデンバーグ

それは春も終わりに近い曇天の午後だった。北極圏に立つ私の心臓は、興奮で今にも飛び出しそうになっている。
オオカミの巣に入る――まさにこの瞬間のために、私は三度の夏をオオカミの群れと共に過ごし、彼らの信頼を勝ち得てきたのだ。
1986年3月、私が彼らを発見したのは、いやむしろ彼らが私を発見したのかもしれないが、とにかくそれは本当に偶然のことだった。そのとき私は、カナダのエルズミア島から北極点へと至る「シュテーガー・シューク犬ぞり探検隊」に、写真家として同行していた。

エルズミア島というのは、北極圏に1600kmほど入り込んだところにあり、ほぼ北米大陸最北端と言える。たとえここから南に向かっても、約2000kmは木も生えない土地が続く極寒の地だ。しかも冬の間は何ヶ月も極夜（白夜とは逆に昼でも暗い）が続くというのに、この地には様々な動物が暮らしている。ホッキョクギツネ、ホッキョクウサギ、レミング、オコジョ、カリブー、ジャコウウシ――そして幻のホッキョクオオカミである。
ホッキョクオオカミは近縁のシンリンオオカミと同じくタイリクオオカミの亜種だが、全身が真っ白なのだ。

ここで私は、探検には付き物のぐだぐだした時間を過ごしながらも、ジャコウウシの撮影をはじめた。そして、ジャコウウシの群れを追いながら、午後中ずっとツンドラを走り回った帰りのこと――疲労と寒さにとらわれた私の前に、6頭のホッキョクオオカミの群れが、夕闇の中に突然亡霊のように現われたのだ。

オオカミたちはそこで静かに座った。そして数分の間、私を品定めするように見つめたのち、ジャコウウシを追って去っていったのだ。 それはまるで夢のようであった。 おそらく探検者のキャンプ地がそばにあるため、人間を見慣れているのだろう。彼らはまったく人間を恐れてはいないようだった。それは、森でオオカミを撮影するのはまったく異なり、彼らと私の間には遮るものなど何もなく、人生でも最高のシャッターチャンスだった。

それから3年にわたりその地を訪れたが、オオカミと子どもたちは、私に生活のすべてを撮影・録音することを許してくれた。 そんな中でも、毎年6月に巣穴から現われる子どもたちほど、私を魅了したものはない。初めておどおどと巣穴を出てから、雪と闇に包まれる冬の前までに、彼らは生き抜くためのあらゆる方法を学ぶ。期間にしてわずか2、3ヶ月。オオカミとしての資質を身につけるにはあまりに短い時間である。（続く）

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