日本のイラストレーションの本当の魅力を世の中にプレゼンテーションするという考えの元アーツ千代田 3331で行われた「ILLUSTRATION WAVE VOL.1 2018」
日本を代表する222人ものイラストレーターの原画が一度に見ることのできる贅沢な本イベント、弊社アマナイメージズも協賛させていただいており大盛況で幕を閉じました。

10月30日には総合ディレクションをされたヒロ杉山氏とイラストレーターの白根ゆたんぽ氏、進行としてアマナイメージズのクリエイティブディレクター松野正也氏、vision track 代表取締役庄野裕晃氏によるトークセッション「イラストレーターの仕事と可能性を広げるには?」が行われました。

誰もが知りたいこの内容レポートまとめておりますので是非ご覧ください。

日本の独特の文化を今のタイミングでプレゼンテーションしたいなと思って


松野
まず初めに本展示会についてお聞かせ願えますか?

ヒロ
日本のイラストレーションは独特でとても面白いんですよ。イラストレーションとアートの境目があまりないのも特徴で、海外ならアーティストと呼ばれているような方がグラフィックをやられていることが多かったりします。
「へたうま」という概念も日本独自のもので、下手でもセンスがあれば面白いというイラストレーターの概念が日本には広がっています。そういった日本の独特の文化を今のタイミングでプレゼンテーションしたいなと思って今回開催しております。

庄野
ネットでのやりとりが主流となった今、イラストを画像でしかほぼ見る機会がなくなりました。イラストを原画でこれだけの数を一度にみられることはとても新鮮でしたし貴重だと思います。

松野
白根さんは今回参加されてどういった印象を受けていますか?

白根
学生だったのですが、TIS(東京イラストレーターズ・ソサエティ)が発足当初渋谷とか銀座のデパートなどで大きな展覧会を開いていて、会場を見てイラストレーターってすごいなと思いました。
その規模の展覧会が久しぶりに開催されたなと思いましたね。

松野
昔のイラストレーションの黄金期はどのような感じだったのでしょうか?

ヒロ
僕も知らないです(笑)背中が若干見えていた感じなんですよね。
でも僕が仕事を始めたころは予算や作品の自由度は今より高かったです。オーダーのされ方も「かっこいいもの」とかで通っていましたし、マーケティングより作家の感性が優先されていたのは今と大きく違いますね。

白根
ぼくの学校は渋谷にあったため公園通とかよく歩いていたんですが、当時は街自体が元気で毎週のようにファッションビルのウィンドウディスプレイが変わっていたりゲームセンターの内装をまるまるアーティストが担当したりと、面白かったですね。

庄野
今だとそのダイナミックさはないですね。当時と比べて他に変わったなと思うことありますか?

ヒロ
大学で講義しているとイラストレーターになりたいって男性はほとんどいないです。今はほぼ女性ですね。

松野
何か理由ってあるんですかね?

ヒロ
やはり、今はイラストレーターが儲かる職業というイメージがないんでしょうね。後スターがいない。スターがいないと儲かると思われないですし、憧れの職業にはならないですよ。

庄野
LINEのスタンプのTOP10の人たちは平均が1億を超えるそうです。今ではこういった方たちがある意味「スター」なのかもしれないですね。

いい絵をかいても見てもらえないと始まりませんから、作者からの発信は大事だとおもいます。

松野
継続して仕事がつながっているポイントってご自身の中でありますか?

白根
締め切りを守っています(笑)。昔は遅れてもいいものを作ればOKというムードもあったのですが、今は遅れてしまうといろいろとマズいですね。
あとは、30代になるまでは会社で働けると思っていたのですが、さすがにもう会社員になるのは無理だろうなと思いまして。なるべくこの仕事を続けられる方法をあれこれ考えながら仕事をしています。

松野
SNSは活用されていますか?

白根
自分は活動を報告しているという感じが多いですね。

ヒロ
インスタのストーリーは力入れてやっていますけど、完全に趣味です。自分の時代はSNSがなく、イラストレーターは仕事の電話を毎日待っているものでした。電話が鳴って初めて仕事が始まるんです。
僕はそれが我慢できなくてフリーペーパーをつくったりし始めたのです、電話を待っているよりも先に自らプレゼンテーションしようと思いました。今の時代はSNSがあり簡単にプレゼンテーションができるのはうらやましいですよね。

白根
80年代はポストカードを作ってお店においてもらうという方法もありましたがまわり道ですよね。いい絵をかいても見てもらえないと始まりませんから、作者からの発信は大事だとおもいます。
今の時代はSNSもありますし松野さんがいらっしゃるアマナイメージズさんや、庄野さんのいらっしゃるヴィジョントラックさんのようにプレゼンテーションをしてくれる会社もある。とてもいい時代ですよね。

庄野
ヴィジョントラックのNGワードは「仕事ください」です。創業当初は必死だったので「仕事ください」と営業していたのですけど、それではいい仕事がこないし、お互いによい関係を築くのが難しい。売りに行くのではなく「売る仕組み」を作るのが大事だと思っています。ブランディングとマーケティングが重要です。

ライセンスビジネスは本当に可能性がありクリエイターの仕事を広げることができると思います。

松野
イラストレーターはこれからどのような仕事が多くなるでしょうか?

白根
ちょうど今日トークイベントの前に自分のゼミで都築潤さんをお招きしてイラストの派生から現在までの話をしてたのですが、「メディアに載った図版のことをイラストレーションと呼ぶ」ととらえると誰が描いたものでもイラストレーションとして成立する可能性はあるわけです。
乱暴にいってしまうとイラストレーションは無くならないけどイラストレーターがいなくなっても大丈夫というか。マンガ家やアニメーター、フォロワー数の多い人など、いろいろな人がイラストレーションを描く機会は増えていくとおもいます。いままでは、コンペ形式で新しい才能を大人が選ぶ、というのが主流だったと思うのですがこれからは、インスタのフォロワー数など、作者と同世代の人の支持が仕事につながる理由になるケースもあります。そうなるとイラストレーションの幅が広がるというか様々な人がこの世界にたずさわることになるかと思います。

ヒロ
80年代のイラストレーションからみている身としてはMacの出現はイラストレーターという職人的な仕事事を終わらせると思いました。イラレとフォトショップがあれば技術がなくても自由に描けます。描く対象とセンスさえあればデザイナーさんでも誰でもイラストレーターになれる時代がくるなと思いした。
それから約20年経って、原点回帰ではないですが、イラストレーションのデジタル化は飽和してアナログとの融合がでてきているように感じます

白根
その話をうけると「いらすとや」さんはそういった誰でも描ける現状のアンサー的な作風ですよね。最初はビジネスとして成り立つと誰も思ってなかったんじゃないでしょうか。

庄野
そういったことで言うとイラストレーターが発注を受けなくてもお金になると感じたのがストックフォトでした。ライセンスビジネスです。自分が好きで描いたものが仕事、お金になる。ライセンスビジネスは本当に可能性がありクリエイターの仕事を広げることができると思います。イラストレーターの収益源の一つになりえるし、自分の新たな表現の場所にもなります。

松野
今は単純にHPで販売しているわけではなく、「アートトレイン プロジェクト」では東京メトロさんの電車の中でアート作品として販売させていただいたり、「PIFT LAB(ピフトラボ)」というサービスで伊勢丹さんでオンデマンド商品を販売させていただいたりと様々な取り組みを行っています。描き起こしの依頼はもちろんですが、クリエイターのためのプラットフォームだと思って活動をしています。お二人はライセンスビジネスについてはどう思われますか?

白根
お金の計算をしたくてイラストレーターをやる人はそういないというか、むしろ逆なので、ライセンスの管理や海外対応などのサポートしてくれるのは非常にありがたいですね。

ヒロ
絵を描いた後どうするか考えずにイラストレーションをかいているようなものですから、もっと早く知っていればなと思ってしまいますよ。

庄野
イラストレーターさん自身がマーケティングをしすぎると、作品が面白くなくなってしまう可能性があるので、好きに描いた作品がそのまま仕事になるところもライセンスビジネスの良さだと思っています。

ヒロ
海外はエージェントありきですよね。ギャラ交渉はあまりしたくないですし第3者に交渉してもらった方が断然いいと思います。その方が描き起こしの依頼も多く来るし対応もできますよね。

白根
小規模なスモールビジネスの橋渡しもあればうれしいですね。SNSが活発になってからはダイレクトメールで個人で飲食店を経営されてる方からの依頼などもあって、そうなると発注受注がおたがい慣れてないのでむずかしいんですね。
ロイヤリティや販売がシステム化されていたりするのは参考になります、いつでも簡単に買えるというのもライセンスビジネスのいいところですよね。簡単に選べて使用できるという仕組みは心強く思います。

最後に

今回のレポートには記載できない会場だけのお話や、イラストレーションの最前線のお話をたくさん語っていただきました。また自身の作品を見ていただくレビュー会なども行われ、充実した内容となっていました。

11月1日にはヒロ杉山氏×千原徹也氏トークセッションも行われました。こちらの内容も合わせて是非ご覧ください!!
https://portfolio-ai.com/illustration-wave-02

会場の様子

ポートフォリオレビュー会


イベント概要【イベントは終了しております】
内容:イラストレーション ウェーブ VOL.1 2018
URL:https://www.3331.jp/schedule/004529.html
日程: 2018年10月27日(土)~2018年11月04日(日)
時間: 11:00-20:00
備考: 最終日18:00閉館
休み: 会期中無休
料金: 一般800円 / 65歳以上、高校生以下無料 ※障害者手帳をお持ちの方とその付き添いの方1名は無料、当日に限り出入り自由
会場: 1F メインギャラリー

参加者
IC4DESIGN 青山タルト 赤池佳江子 浅妻健司 浅野みどり あずみ虫 東 逸子 姉川たく 網中いづる AYUMI TAKAHASHI 新井苑子 荒井良二 新目 惠 あわい 飯田 淳 飯野和好 いざわ直子 石川えりこ 石山好宏 板垣しゅん 井筒啓之 井筒りつこ 伊藤彰剛 伊藤桂司 いとう瞳 いぬんこ 伊野孝行 今井トゥーンズ 白尾可奈子 上路ナオ子 上田三根子 上田よう ウエノ★アモーレ★ヒロスケ 宇野亞喜良 浦野周平(Shu-Thang Grafix) えつこミュウゼ 遠藤拓人 えんどうゆりこ 大高郁子 大西 洋 大森とこ 小笠原 徹  小川かなこ 小岐須雅之 奥原しんこ 音部訓子 小渕もも 海谷泰水 影山 徹 加藤裕將 金子ナンペイ 河井いづみ 川上和生 川崎真奈 河野未彩 川村 易 河村康輔 川元陽子 管野研一 管弘志 木内達朗 北澤平祐 北沢夕芸 北住ユキ 北谷しげひさ 北見 隆 北村 治 北村ケンジ 北村 人 橘田幸雄 木原未沙紀 木村晴美 国井 節 久保周史 久保誠二郎 くまあやこ 熊井 正 久村香織 黒田愛里 黒田 潔 KUNTA 近藤圭恵 サイトウマスミ 斉藤美奈子ボツフォード サイトウユウスケ 阪口笑子 坂口友佳子 さかたしげゆき 坂本奈緒 櫻井砂冬美 佐々木悟郎 笹部紀成 ささめやゆき 佐藤香苗 佐藤邦雄 佐藤昌美 sanoooo Jennykaori 七戸優 信濃八太郎 篠崎三朗 霜田あゆ美 下村 勝 JUN OSON 城芽ハヤト 白根ゆたんぽ しりあがり寿 Sui Yumeshima スージー甘金 スガミカ 須川まきこ 須田浩介 赤 勘兵衛 五月女ケイ子 空山基 高橋キンタロー 高橋 潤 竹井千佳 田尻真弓 田島征三 田代 卓 多田景子 建石修志 田名網敬一 谷口広樹 田村映二 タムラフキコ タラジロウ 丹下京子 チカツタケオ 辻 恵子 土谷尚武 都築まゆ美 tupera tupera 寺田克也 寺本愛 天明幸子 唐仁原教久 時吉あきな とどろきちづこ 戸屋ちかこ とんぼせんせい 永井博 永井もりいち 中川 学 長野 剛 ナガノホナミ 長場 雄 中村幸子 中村 隆 薙野たかひろ 西口司郎 西山寛紀 二宮由希子 野村俊夫 鴻 奈緒 長谷川慶子 長谷川洋子 秦 直也 初谷佳名子 花くまゆうさく 早川モトヒロ 樋口たつの 日端奈奈子 平井豊果 平澤一平 ヒロ杉山 廣中 薫 ヒロミチイト face 福井真一 藤井桜子 藤井紗和 藤居正彦 舟橋全二 古川タク 古谷充子 ほししんいち 堀内結 マスリラ 松井有希 松倉香子 松本孝志 真鍋太郎 真々田ことり 丸山一葉 丸山誠司 micca みずうちさとみ 水上みのり 水口理恵子 水沢そら ミック・イタヤ 南 伸坊 ミナミタエコ 峰岸達 ミヤギユカリ ミヤタチカ 村井和章 もとき理川 本 秀康 森 邦保 モリスン YASUNARI AWAZU 矢吹申彦 山口はるみ 山口マサル 山崎綾子 山下以登 やまぞえみよ 山田博之 山本重也(Shige) 山本由実 ユムラタラ 吉岡里奈 吉實 恵 Rockin’Jelly Bean 若林 夏 渡辺 宏 渡辺浮美生 渡辺リリコ わたべめぐみ