先日、アマナ社屋にて、アプリ開発、ホームページ制作、デザイン、ライティングなどの仕事を受発注できる日本最大級のクラウドソーシングサービスを運営するクラウドワークス、運営メディアの代理店募集や広告枠の販売、Web制作事業などを行い、Google Analyticsの解析レポートを自動生成するサービス「KOBIT」を運営するクリエイタ―ズネクスト、国内最大級のストックフォト販売サービスamanaimages.comを運営するアマナイメージズが、共催セミナー『コンテンツマーケティングにおける「成果につながるコンテンツ」とは』を開催しました。

コンテンツマーケティングセミナー

本セミナーでは、企業の広報担当者やマーケッターを対象に、昨今話題の「コンテンツマーケティング」を実践する際に必要となる、コンテンツ制作と、その評価・分析手法について、各分野を代表する上記3企業から1名ずつ講師が登壇しました。クラウドワークスからはBtoC、BtoB Webメディアのコンテンツ企画・制作を担当している、エンタープライズ事業部アカウントディレクターの山上陵太氏、クリエイタ―ズネクストからは、省庁やメーカー、介護医療業界、不動産分野でのSEO対策コンサルティングを担当し、SEO対策・Web解析を担当し、売上増大、費用削減面での成果をあげている窪田望氏、ストックフォトサービスを主要事業とする株式会社アマナイメージズからは、取締役の新居祐介氏が登壇。

セミナーは各氏によるプレゼンパートとパネルディスカッションパートに分かれており、まずは、新居氏の「メディア運営における安全で効果的なビジュアルとは?」というテーマのお話でセミナーがスタートしました。

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近年、コンテンツマーケティングにおいて、高品質かつ安全なビジュアルが重要となってきている。その理由に、①マーケティング効果に明確な差が生まれること、②コンプライアンス意識の高まっていることが挙げられる。

マーケティング効果に明確な差が生まれる

さまざまな調査結果により、記事に適切な画像を使うことにより、反応や拡散に差が出ることが明らかになっている。今後、その中で差別化をしていくためには、画像の質・使い方が重要となってくる。

効果的なビジュアルコミュニケーションを行うには

写真には2つの力があることを意識する。

1.information(情報)=データを表す力

2.emotion(感性)=ストーリーを表す力

写真は単に情報を伝えるだけでなく、見る人の心を動かすこともできる。写真を使う文脈にあわせて、文章の中で効果的に使い分けていただきたい。

文章と写真の関係

記事に写真を合わせるとき、写真は2つの選び方がある。

ひとつは、写真=文章となるような、説明的な選び方。もうひとつは、写真×文章となるような、謎かけ的な選び方。後者は、一見「なぜこの写真?」と思うような、考えさせる写真を持ってくることで、読む人の中に「ひっかかり」を与えたり、より強い印象を残すことが出来るので、読者に行動を促すなどの効果がある。

コンプライアンス意識の高まり

2015年に東京五輪のオリンピックエンブレムの著作権問題が注目されたことにより、企業でも無料の画像ではなく、安全で高品質な画像を使用する傾向が高まってきているなど、コンプライアンス意識が高まっている現状がある。そのため、オウンドメディアで使用する画像にも注意が必要となっている。特に、人物が映っている写真などは、肖像権の侵害などのトラブルとなる可能性もあるため、あらかじめ権利処理されている写真を利用するのが安心。


続いてクラウドワークス山上氏が、「いいコンテンツを、たくさんつくるために。 ~クラウドワークスを活用したコンテンツ量産のポイント~」というタイトルで、いいコンテンツをつくるために企業がすべきことについてお話しいただきました。

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2016年はコンテンツ飽和時代。流通している情報の半分は誰にも見られていない状況になってきている。飽和時代だからこそ、「いいコンテンツをたくさんつくりたい」という思いはマーケター、クリエイターともに持っているもの。では、「いいコンテンツ」とはなんなのだろう?

「いいコンテンツ」は、ユーザーの検索したいことに対する「答え」が必ずあるコンテンツ

「答え」とは・・・

①網羅性と専門性がある

②分かりやすい、見やすい構造

③ユーザーの意図を捉えている

④正確である

⑤オリジナリティがある

ユーザーが知りたいこととは?

潜在層、検討層、健在層によって、知りたいことは変わるので、当然読まれるコンテンツが変わってくる。潜在層には認知させるための記事、顕在層に対しては購入に繋げる記事など、ユーザーにとって価値のあるページが検索ページで上位に上がってくる。さらに、専門性、網羅性ともに含んでいるリッチコンテンツはユーザーの期待にこたえており、検索結果で上位に表示される。

コンテンツを量産するには

①短期~中期計画を立てる

・メディア、サイトの目的整理→ターゲットは誰で、どんなアクションをさせたいのか?

・一言で言うと、どんなメディアにしたいのか?

・いつまでに何をゴールとして目指すのか、社外のパートナーとも共有することが重要

・垂直立ち上げはせず、トライアルを経て量産フェーズに進む

②コンテンツレギュレーションをつくる

・キーワード、記事の3C分析(自社、競合、カスタマー)

・記事ルール(検索意図~キーワードだし、記事構成、タイトル&概要設計

・画像ルール(有料素材サイト、引用もとの明確化)

・リンク引用ルール、表記ルール

③編集体制(社内・社外)をつくる

・制作フローを設計し、社内外で共有する

・発注レギュレーションシートを作り、クラウドソーシングを利用する

・あらかじめ制作フローを固める

・詳細な記事構成案を作っておく

・本数、納期を決める

④振り返り、学習する(チューニング)

コンテンツのよしあしは、ライターのよしあしに必ずしも比例しない

・ライター別、記事テーマ別に、記事の効果振り返りを行う

・ポテンシャルのあるライターにフィードバックを行い、教育する

・コンテンツを修正・編集しつづける→一度出した記事をアップデートする、関連記事を追加するなどしてチューニングすることがコンテンツの質を上げる

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クラウドワークスのクラウドソーシング

会員20万人のライターから、アカウントディレクターがトライアルを繰り返し、3000名のライターを選抜。全ライターをプロライター、セミプロライター、アマチュアライターの3層に分けてプール。案件に応じてアサインし、育成を実施している。

選抜ライターが制作した記事を、社内チェッカーがチェック、校正、リライトする体制を構築。ライターに戻すと数日かかる場合もあるので、社内でチェックするのが最善。

コンテンツ量産で気を付けるポイント

よくある落とし穴

①垂直立ち上げができない

②記事のクオリティが上がっていかない

③編集部体制が整わない

④振り返りができない

いいコンテンツをたくさんつくるには、発注者側の情報整理が最重要。メディア方針とコンテンツレギュレーションを明確に言語化すること。ライターの情報編集力に過度に期待するのではなく、いいコンテンツを共に創り上げる意識を共有する。社内編集部と社外ライター、制作会社が同じ方向を向かなければ、コンテンツマーケティングは成功しない。


続いて、クリエイターズネクスト窪田氏が「グロースハックの海外事例とGoogle Analyticsのコツ」というタイトルで、Google Analytics(以下GA)のお話しました。

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多くの企業はGAを設置しているだけで、改善までは繋がっていない。データから課題を抽出する、改善施策を実行するところまで至っていないケースが多い。

改善は大きな塊から始めるのがグロースの鉄則

改善しやすさよりも、改善した場合のインパクトの大きさで考える。=インパクトファースト

違和感のある数字を見つけやすくする頭をつくる

・CVRは1%以上がよい

・直帰率は40%以下がよい

・リードからの営業転換率は10%以上がよい

このように基準となる数字を頭で思い描きながらGAを見ていく。

だれのために改善するのか、ペルソナを決める

・「20代男性がターゲット」はマーケティング的に誤り。詳細な設定を。

・会議で話がぶれてしまうのは、それぞれが思い描くペルソナが違うから。まずはペルソナを明確に。

・一番理想のペルソナではなく、欠点があるペルソナに設定するのがよい。

改善の際のよくある5つの間違い

①製品開発より先に成長を求めてしまう

②機能を追加すれば顧客は増えると考えてしまう

③機能を文章で説明してしまう

④一度に全てを解決しようとする

⑤失敗を恐れ、成長に「絶対」を求めてしまう

「ブライトスポット=うまくいっていること」に注目し、小さな成功を積み重ねていくことで、グロースハックさせることができる。

改善する際に知っておきたいユーザーと文章に関する3原則

①ユーザーは文章を読まない

②ユーザーは文章を信じない

③ユーザーは文章で行動しない

最初の文章を読まれなければ、次の文章は読んでもらえない。ページの最初のキャッチコピーが重要。

効果的なキャッチコピーをつけるために、いくつかの心理学的な法則を知る必要がある。

例)シャルパンティエ効果、カクテルパーティー効果、ハロー効果、認知的不協和 等

改善のヒント

・ストーリーを作る

例)アイスバケツチャレンジ

  ・時間制限があり、行動を迫られる

  ・「やる、やらない」ではなく「いずれかをやる」というように選択肢が提示されている

  ・公に指名されることで、何らかの反応が要求される

  ・3人の知人の名前を挙げるだけで、容易に広められる

・広告塔にする

オンラインでもオフラインでも、既存顧客にファンになってもらい、口コミの発信源の役割を果たすことで、その商品・サービスの認知度向上に寄与させることができ、グロースハックでも紹介の促進に役立つ。

ログ解析について

グロースハックのために、ログ解析が必要となるが、時間がかかるため、本来必要なグロースハックのためのアイデア出しに時間を割けない場合が多い。

クリエイターズネクストが提供している、GAから自動的にレポートや改善案を提供できるサービス「KOBIT」を使えば、これまでログ解析にかかっていたコストを下げ、時間を創出することができる。また、専門家にしか作ることができなかったレポーを、誰もが簡単に作ることができるようになる。


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続いて、パネルディスカッションパートへ突入。登壇者3人それぞれがそれぞれへ質問を投げかけ、答えていくというスタイルで行われました。

まずは、新居氏から山上氏への質問。

Q.オウンドメディアの運営を始めて、最初に設定したペルソナに対してコンテンツが刺さっているかどうかを判断するタイミングはいつでしょうか?

山上氏:“刺さった”というのがどういうことかということが重要かと思います。メディアを運営する時、「この記事はバズるはず!」と思っていたものでも、PV数がまったく伸びないこともあります。なので、明確にこのタイミング、というのは難しいですね。

窪田氏:ひとつはサーチコンソールから分析できるもの、GAから分析できるもののふたつに別れていると思います。サーチコンソールでは、その記事にインプレッションが出ているか、その記事のクリック率はどうか、によってタイトルとmeta descriptionの組み合わせがバズりやすいかどうか、が判断できると思います。GAでは、ページの滞在時間やページ遷移率、リピート回数などから少ないアクセスの段階からその後の波及度を推察することができます。バズるというと、一気に広がるように思ってしまい、最終結果ばかりが気になってしまいがちですが、「バズる要素」を小さく分解していくことで、この記事の広がる可能性を推察できます。また、ソーシャル受けするかどうか、を判断する場合は1セッションに対する「いいね比率」や「ツイート比率」を見ることで、刺さったかどうかの推察をすることもできます。

続いて、新居氏から窪田氏への質問。

Q.コンテンツマーケティングにおいて、Google Analyticsを使った解析をする際、必ず見た方がいい数値は?

窪田氏:コンテンツ経由のコンバージョン率をユーザーエクスプローラーと組み合わせて分析しています。ユーザーエクスプローラーという機能で一人ひとりがどのように行動しているのかが分かるのですが、コンバージョンに至ったユーザーと至らないユーザーを分けて分析することができます。その2つに分けて、詳細に行動を分析することで、どういうタイプの動きをする人はコンバージョンに至り、どういうタイプの動きをする人はコンバージョンに至らないのかがわかります。コンバージョンする人の行動を促進するようなUI/UXを考えることで、コンバージョンしなかった人の行動を変えるアイディアが思いつくかもしれません。

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続いて、山上氏から窪田氏へ。

Q.記事のPV数を指標としている企業様が多いですが、様々な記事に一律で目標数字を設定した方がいいか、記事全体で合計PV数を置いた方がいいのか?

窪田氏:基本的にはどちらも見ていますが、記事の評価をするためには、記事の特性を整理した上で評価する必要があります。例えば、ソーシャルから流入しやすい記事か、オーガニックから流入しやすい記事か、という点は重要な分類手法です。いわゆるバズる記事はソーシャルから大量流入したあと、オーガニックへと移っていきます。一方で、最初は日の目を見なくとも、じわじわアクセスを集めるSEO型の記事もあります。記事の分類によって流入の仕方・見るべきアクセス数の期間が違ってくるので、記事のタイプごとに目標の達成を設定すると良いでしょう。

新居氏:今出てきた記事のタイプに関して山上さんにもお伺いしたいのですが、クラウドワークスでは、メディアを運営していくとき、どの記事タイプをどのくらいの分量にするのか、全体の記事数に対する構成比を設計することはあるのでしょうか?

山上氏:バズらせるコンテンツは特定のライターやクリエイターに頼むことがほとんどなので、大量にコンテンツを制作する場合はSEOを狙った記事が多くなりますね。

続いて、山上氏から新居氏へ。

Q.有料画像、無料画像でクリック率の違いや、SEO上での効果の違いがあるのか?

新居氏:お客様から、他の人が使ってない画像を使いたいという要望を聞くことが多いのですが、無料画像はどうしても似てきてしまうんですよね。画像が似ていると、どの記事も同じように見えてしまうこともあります。さらに、似たような画像が広告にも使用されている場合があるので、広告を倦厭する人から記事がクリックされないという可能性も高くなってきます。

コンバージョンを上げたい記事は、無料画像ではなく、有料画像を使うなどして使い分けが必要だと思います。

山上氏:画像は、Sサイズ、Mサイズのようにサイズが分かれてますよね?サイズによっても画像の効果は異なりますか?

新居氏:お客様にはできるだけ大きな画像を使ってもらうケースが多いです。オウンドメディア内の記事で使用する場合、たとえばアイキャッチ画像に使用するとなると、ビジュアルでコンテンツの印象が変わることも多いと思うので、アイキャッチ画像は特に大きなサイズを使ってもらうのがいいですね。

そして再び、山上氏から新居氏へ。

Q.有料無料画像サイトで抽象度の高い概念(保険、転職、不動産など)を調べるときのキーワードの設定の仕方が知りたい。

新居氏:記事の中身が誰に向けたものなのか、何を伝えたいのかを明確にすることで、ターゲットにキーワードが紐づいてくるので、紐づいたキーワードを使って検索するといいと思います。あとは、関連ワードを使うなど、ワードを置き換えて検索したり、自分の中でビジュアルの想定があるのであれば、その想定を言語化していく方法もあります。

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新居氏から山上氏へ。

Q.オウンドメディアを新たに立ち上げる際、リリース段階である程度記事の本数があった方がいいと思いますが、何本くらいが妥当?

山上氏:立ち上げで1000本という企業様もいますが、そうすると、どうしてもひとつの記事の質が低くなってしまうんですよね。クラウドワークスの場合、発注のタイプがプロジェクト型タスク型があるんですけど、タスク型は記事を大量に作ることはできますが、修正ができなかったり、書く側も作業になってしまうので、品質が低かったり、記事によってばらけたりしてしまうんですよね。なので、初月は数十本、多くても100本が妥当で、そのあと徐々に増やしていくというのがいいと思います。

窪田氏:いきなり1000本というオーダーが来るのはすごいですね。クラウドワークスさんでは、最初に作るコンテンツで気をつけていることはありますか?

山上氏:レギュレーションをきちんと作るということを気をつけています。どういう観点で書くのか、定性的な部分を徹底的に突き詰めていくと、記事作成をスムーズに進めることができる場合が多いですね。

新居氏:お時間も少ないので、最後にひとつだけ。メディアの立ち上げにあたって、成果を求める方も多いと思います。メディア担当の方がコンテンツマーケティングの成果が見えてくるまでに時間を要することを承知していても、最終的な決定権を持つ上層部の方がなかなか納得してくれない場合もありますよね。そのような場合、どのようにして担当者の方に上の方を説得するアドバイスをしているのでしょうか?

窪田氏:花火のように打ち上げて、バズることを狙う場合と、地道にPVを稼いでいく場合を切り分けるようにしています。ディスプレイ広告から記事にランディングする場合もありますし、オーガニックでアクセスが来て、そこからランディングしてコンバージョンになる場合もあります。後者の場合、ランディングページに直接広告流入させるという実験を最初にできるんですね。そこでABテストを繰り返すことができるので、最初の方でABテストを繰り返して仕組みを作ることができると、オーガニックでアクセスが来てランディングページに来てもらう時も一定のコンバージョンが取れるんです。そうすると、コンテンツの正当性が認めてもらいやすい。

山上氏:企業のコンテンツマーケティングをしているトップの人には、コンテンツが資産として溜まっていくことや、PRとブランディングにも使えますといったことを説明したり、成功事例の紹介をするなどして説得していくことがありますね。


コンテンツマーケティングにおける「成果につながるコンテンツ」について、ビジュアルの観点、コンテンツそのものの観点、分析の観点から各氏が話し、パネルディスカッションでは、各氏が具体的な疑問を投げかけ合うことによって、コンテンツ制作と、その評価・分析に関する密度の高いノウハウをお送りすることができたのではないでしょうか。

作っても読まれないコンテンツが数多く存在するコンテンツ飽和時代。そんな時代において、これからコンテンツマーケティングに取り組みたい、また、既に取り組んでいるけれど、思うように成果が得られないと思っている方は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。